研究課題/領域番号 |
16K19815
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 千恵 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 助教 (20637285)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PET / アミノレブリン酸 / フッ素-18 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、アミノレブリン酸投与時の腫瘍におけるプロトポルフィリンIX蓄積量を評価するフッ素-18標識PETプローブの開発を目的に、候補化合物である[F-18]フルオロレブリン酸 ([F-18]FLA) の標識合成条件を検討した。[F-18]フッ素導入反応に続いて保護基であるメチルエステルを加水分解するため、1 M水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温で5分反応させたところ、目的物より水溶性の高い副生成物を生じた。一方、2 M塩酸水溶液を加え、120℃で5分間反応させたところ[F-18]FLAが95%以上の放射科学的変換率で得られた。以上の知見を基に自動遠隔合成を試みたところ、照射終了から55分で、放射科学的収率14.4% (減衰補正なし) で、[F-18]FLAが放射科学的純度95%以上で得られ、[F-18]FLA標識合成法の確立を達成した。 [F-18]FLAをin vitroで、培養腫瘍細胞に添加し37℃で20分間インキュベートした際の取り込み量を評価したところ[F-18]FLAはほとんど細胞内に取り込まれなかった。[F-18]FLAを担がんマウスに投与し、PETによりin vivoにおける体内分布および腫瘍集積性を評価した。肝臓、腸管、腎臓に高い放射活性の集積が認められ、腫瘍への集積はSUV 1.0未満であり、プロトポルフィリンIX蓄積量の異なる腫瘍間における[F-18]FLA集積量の差は認められなかった。In vitroにおいて、過剰のアミノレブリン酸存在下における[F-18]FLAの細胞取り込みが阻害されず[F-18]FLAはアミノレブリン酸とは異なる機序により細胞に取り込まれることが示唆されたことから、現在、アミノレブリン酸と同様の機序により細胞に取り込まれると期待される新規候補化合物を設計し、合成検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画に従い、当該年度までにPETプローブ候補化合物を標識合成し、培養細胞および担がんモデルマウスを用いてin vitro, in vivoにおけるPETプローブとしての性質を評価したが、当初設計した候補化合物は所期の性質を有さないことが示された。現在、得られた知見を基に新たな候補化合物を設計し、合成検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
当初設計した候補化合物は所期の性質を示さなかったことから、現在、これまでに得られた知見を基に新たな候補化合物を設計し、非標識候補化合物および標識前駆体の合成検討中である。今後、標識合成法を確立し、新規候補化合物のin vitro, in vivoにおけるPETプローブとしての性質を、当初の候補化合物と同様に評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実施計画に従って、当初設計した候補化合物をin vitroおよびin vivo評価を実施したところ、目的とする性質を有さないことが示されたことから、研究実施計画を変更し、新たに設計した候補化合物の合成を開始した。当該年度には候補化合物のより詳細な評価を行うための予算を計上していたが、新規候補化合物の標識合成法確立後に実施する必要が生じたため、次年度使用額が生じた。 平成30年度には、新規候補化合物の標識合成法を確立した後に、平成29年度に予定していたin vitro, in vivoにおける評価と並行して、平成30年度に予定しているより詳細な評価を実施する予定である。
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