生体肝移植ではドナー候補者の術前解剖評価が重要であるが、造影CTで行われるためヨード造影剤のリスクと被曝が問題となる。本研究ではこれを克服するため、非造影MR angiographyへの圧縮センシング応用を軸とした撮像時間短縮と画質改善を試み、造影CTと遜色ない術前評価を、造影剤なし・被曝なしで、妥当な検査時間内で施行できることを目指した。 門脈については呼吸停止下の非造影MR portographyの撮像手法について検討し、健常ボランティアを対象とした撮像を行った。現状では30秒程度の呼吸停止が必要となるが、肝内門脈亜区域枝レベルまでは呼吸同期MR portographyに劣らない診断能が得られる。この研究内容は学会、専門誌で発表された。 肝静脈については、高分解能MPRAGE(予備IRパルス付3D高速グラディエントエコー)を用いた手法での描出を検討した。これは従来法の欠点となるbanding artifactを排した手法で、良好な肝静脈描出が得られることが分かった。ドナー候補者を対象に手術結果をgold standardとして検討し、造影CTと比較してより正確な描出を達成できた。この結果は専門誌に掲載された。 胆管については圧縮センシング併用呼吸停止下3D-MRCPをドナー候補者に対して撮像した。今回の検討では従来の呼吸同期3D-MRCPより画質が劣る傾向であり、呼吸同期法が失敗した場合の保険としての意義はあるものの、従来法を置き換えることは困難であった。この結果は学会、専門誌で発表された。圧縮センシング技術の発展や、その他のMRIハード、ソフト両面での発展により、今後克服される可能性はあると考える。 肝動脈については呼吸同期法、心電同期法の併用、さらに圧縮センシングの応用をするための調整が難しく、本研究期間内では妥当な検査時間内で実用的な画像を得ることができなかった。
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