我々は現在国際的に進行中の癌ゲノム配列情報やマイクロアレイによる遺伝子発現量を統計学的に解析して癌の放射線抵抗性にかかわりそうな遺伝子変異や遺伝子発現パターンを同定し、実際に細胞株を用いてその遺伝子変異や遺伝子発現を導入することで、放射線感受性が変化するかについて確認したいと考えている。平成28年度~平成29年度の2年計画で、TCGA(http://cancergenome.nih.gov)やICGC(https://icgc.org)に公開されているデータの中から必要な情報(患者背景、治療、予後情報、遺伝子変異情報等)を抽出し、遺伝子発現パターンと予後相関について、頭頸部癌や子宮頸癌、脳腫瘍など比較的放射線治療のウエイトが高い癌種で解析し、局所制御率や全生存期間との相関を解析する予定である。初年度の平成28年度はまず研究遂行に適切なパーソナルコンピュータなどの環境を整えることから始め、公共データベースから遺伝子情報を抽出する作業を確立した。特にRNA-seq、miRNA-seqからの遺伝子発現量を解析することができるようになった。その結果、これまで我々が行なってきた癌細胞株から放射線耐性株を作成する実験でのマイクロアレイの結果を比較検討した結果、いくつかの遺伝子の発現パターンが放射線耐性株と、臨床データベースから導き出された予後不良となる遺伝子発現パターンと予後との相関結果と一致することが明らかとなった。今後、さらなる解析を進めていく予定である。
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