研究課題
微小平板ビーム放射線療法(MRT:microplanar beam radiation therapy)は放射光のような高い指向性を持つX線をビーム幅数十μm、ビーム間隔数百μmのすだれ状の細い平板ビームにして患部に照射する方法であり、ビーム内のピーク線量が1回線量で数百Gyという極めて高線量を照射しても組織壊死は発生せず、従来のX線治療、粒子線治療では達成できない極めて優れた生物学的特性があることが報告されている。このようなマイクロビームを多方向から組み合わせて照射することにより、腫瘍組織に高線量を集中させ、今まで根治照射が難しいとされてきた腫瘍の放射線治療に有用であると考えられる。本研究では、マイクロスリットビームX線照射における、腫瘍細胞への抗腫瘍効果を定位的固定が可能なマウスの脳腫瘍モデルおよび体幹部照射を模擬した多発肺転移モデルマウスを用いた実験系で評価し、マイクロスリットビーム放射線治療の体幹部への応用の一助とする。大型放射光施設SPring-8のマシンタイムの関係上脳腫瘍モデルと体幹部腫瘍モデルを同時並行で実験を遂行することとし、今年度は体幹部腫瘍モデルを中心に実験を実施した。14週齢オスのDBA/2Jclマウスを麻酔下で固定し、右肺にSPring-8共用ビームラインから取り出した放射光X線を照射した。ビーム幅25μm、ビーム間隔200μm、ピーク線量120Gy/secのマイクロビームを創出し、照射時間を変化させ照射を行った。脳腫瘍での抗腫瘍効果の報告と同様に、より高線量の照射が有用であると考えられる。またビーム間隔に関してもビーム間隔が狭いほど高い抗腫瘍効果が得られると考えられるが、正常組織への障害も検討し最適なビーム間隔を決定する必要があると考えられる。
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