研究課題/領域番号 |
16K19822
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
檜垣 徹 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 特任准教授 (80611334)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ガドリニウム造影剤 / MRI / 造影シミュレーション / 時間濃度曲線 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、人間の血液で希釈した様々な濃度のガドリニウム(Gd)造影剤をサンプルとして作成し、造影剤の濃度とMR信号値の関係のデータを収集した。昨年度はデータ収集効率を高めるために格子状に配置したサンプルを一度に撮影したが、今回は信号値の精度を高めるために1本ずつ、3Dプリンタで造形した補助具を用い、硫酸銅水溶液でサンプルを取り巻く形でMRIガントリ中心に配置して撮影した。Gd造影剤は、マクロ環構造を有し安全性が高いとされる3製剤、および臨床的な有用性が高いとされる肝特異性造影剤1種の計4種類を使用した。収集するMR装置には3Tの磁場強度を有する3機種を使用した。今回のデータでは、昨年度のデータで見られた製剤間の信号のばらつきが抑制されており、より高精度な濃度と信号強度の関係テーブルを収集できたと考えられる。収集したテーブルをシミュレーションソフトウェアに実装した。 新たに実装したシミュレーションソフトウェアを用い、臨床の造影検査とシミュレーションの結果を比較し、ソフトウェアの精度検証を行った。50名の患者のテスト造影における時間信号強度曲線と、それに対応するシミュレーションで得られた時間信号強度曲線を比較した結果、個々のデータではばらつきが大きかった一方で、群としては高い一致度が得られた。 シミュレーションソフトウェアを用い、CT検査におけるヨード造影の造影理論と、MR検査におけるGd造影の造影理論の相違点を比較する実験を行い、国際学会および教育講演で報告した。ヨード造影ではすべての部位で注入量が造影効果に線形的に影響するのに対し、Gd造影では血管系では流入量の影響が小さく実質臓器では注入量の影響が大きいことが明らかとなった。また、ヨード造影では高速注入するほどピークCT値が上昇するのに対し、Gd造影では注入速度を早めてもピーク信号値への影響が小さいことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたとおり、様々な機種、様々な撮影パラメータで収集した造影剤濃度ー信号値テーブルを用い、MR造影シミュレータを実装した。シミュレーションと患者から収集した時間信号強度曲線を比較した結果、群としては高い一致度が得られた一方で、個々のデータではばらつきが大きかった。これはシミュレーションに必要な入力パラメータの一つである心拍出量[l/min]が不明であったため、体格ごとの近似値をシミュレーションに用いたことが原因であると考えられる。このような理由から、群としての結果の精度は十分であるため、個々のシミュレーション結果のばらつきに関しては検討事項から除外することとした。特許の申請は2018年度に持ち越しとした。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な技術開発および精度の検証が概ね完了したため、今年度はソフトウェアの改良、特許の出願、学会発表、論文の投稿を行う。ソフトウェアの改良に関しては、使い勝手の向上やシミュレーション結果の見せ方など、ユーザインターフェースを中心に実施する。今回の技術の特許となるポイントをまとめ、8-12月を目処に特許申請を行う。国際学会での発表および論文に関しては、これまでに研究されてきたCTのヨード造影剤の造影理論と、開発したシミュレーションソフトウェアで明らかとなったガドリニウム造影剤の造影理論について、その相違点を比較しながら明らかとなった点をまとめて報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定額の変動から次年度使用額が生じたが、少額であるため次年度経費と合算して予定通り執行する。
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