脳転移は成人で最多の頭蓋内腫瘍であり、近年、担癌患者の増加に伴い罹患者が急増している。脳転移の正確な診断は、治療方針の決定に重大な影響を与えるが、病初期の微小脳転移の診断は、サイズが小さく検出が難しい上、さらに増強された血管が病変と紛らわしく、熟練した放射線診断専門医でも容易ではない。このため、微小脳転移を見落とすことなく、かつ簡単に検出できる新たな診断法の確立が求められる。 本研究の目的は、我々が新たに開発した血管抑制画像 (Black像) と非抑制画像 (Bright像) を同時に画像取得できるVISIBLE法の脳転移診断における有用性を検証し、早期診断、早期治療に応用することである。 研究初年度として、過去に九州大学病院にて脳転移スクリーニング目的に撮像された頭部造影MRI症例のうち、VISIBLE法にて診断された脳転移陽性症例のデータベース構築を行った。このデータベースを元に、各腫瘍組織の転移好発部位、サイズ、個数の解析を行った。この解析結果から脳転移確率マップの作成を行うため、Voxel-based morphometryの手法を用いて、患者間の解剖学的情報を標準脳に投影し、脳転移の部位と個数をプロットした。今後症例を集積し、確率マップの発展と改善を行う予定であったが、転勤のためやむなく中断し、十分に解析できていない。現在のところ、後方視的に限られた症例の解析を行い、確率マップが作成できることを確認した。学会にて報告予定であったが、症例の集積が十分ではなく断念した。
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