研究課題/領域番号 |
16K19831
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
三輪 建太 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 講師 (40716594)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | SPECT/CT / 骨シンチグラフィ / 定量性 / 骨転移 / 核医学 |
研究実績の概要 |
骨SPECTの定量化への試みが展開されているが、従来の手法は再現性と定量精度の問題が指摘されている。本研究の目的は安定的な骨SPECT定量法の開発とその臨床的有用性を明らかにすることである。定量値の安定を図るために各SPECT/CTから得られたプロジェクションデータを入力として、散乱補正、減弱補正、空間分解能補正、画像再構成、定量値(SUV)算出の一連の流れを処理可能な定量ツールの開発を進めた。また、定量ツールを評価するための胸部用と腰部用の骨SPECTファントムを作成した。当該ファントムでは骨等価溶液を封入することにより、骨による減弱と散乱の影響を考慮した評価が可能である。また、定量値の評価ではSUVに加え、解剖学的標準化機能を用いたZ-scoreにより、被検者内・被験者間の再現性の向上を目指した。Z-scoreによる乳癌と前立腺癌による骨転移と顎骨壊死の臨床評価では、高い再現性と診断能を示唆する重要な結果が得られており、さらなる研究の展開に期待がかかっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨SPECTの定量ツールの開発については、ほぼ交付申請時の研究実施計画どおり、各モジュールをソフトウェアとして統合化して、プロジェクションデータを入力として補正の一連の流れを処理可能な定量ソフトウェアの完成に至った。当該ソフトウェアは解剖学的標準化機能が実装されており、Z-score を自動で算出可能である。Cross-calibrationについては、再構成画像を用いた方法に変更し、プロジェクションデータを用いた方法を新たに考案し、ソフトウェアに組み込んだ。一方、定量ツールの評価用ファントムは、ほぼ交付申請時の研究実施計画どおり、腰部用と胸部用のそれぞれについて開発を進め完成した(2編の原著論文が掲載済み)。評価用ファントムを用いた評価では、Z-scoreが高い再現性と定量性を担保できることを明らかにした。また、乳癌と前立腺癌の骨転移診断を目的とした臨床評価では、Z-score と従来法のSUVを比較し、Z-scoreの方が転移の診断能が高いことを確認できた。研究成果の発表については、国内外の関連学会において、成果発表を行うことができた。以上のとおり、当初研究実施計画を着実に進展させ、新たな知見も得られており、総合的に評価すると、当初の研究実施計画に対しておおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は3年間の研究計画の最終年度として、昨年度までの研究を継続しながら、基本的には交付申請書の研究実施計画に即して多施設でのファントム・臨床研究を推進する。研究計画は(1)安定した定量的骨SPECTシステムの開発、(2)専用ファントムによる定量値の精度検証、(3)臨床例による定量指標の評価、以上からなる。(1)については前年度に完成した定量ソフトウェアを多施設で検証して、必要な機能を追加しながら、同時にバグを修正する。(2)については前年度完成した専用ファントムを用いて、複数の施設で算出したSUVとZ-scoreに関して定量精度と再現性の検証を行う。(3)についてはすでに臨床評価を開始しているが、多施設連携共同研究へ展開して、症例を追加し、治療前後の定量指標の変化量に着目して、治療効果判定での臨床的有用性を明らかにする。(1)~(3)に含まれない研究活動についても、研究の進捗状況や新たな発見に応じて研究活動を柔軟に発展させて研究活動を着実に進展させる。以上に関して得られた結果を取り纏め関連学会の学術大会や国際学会、さらに主要英文学術雑誌において研究成果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当初29年度に予定していた実験を1回遂行できなかったために、放射性医薬品が未購入なために、使用時期が変更となった。 (使用計画)平成30年度の研究費の使途は、(1)定量ソフトウェアの試作にかかる費用、(2)ファントム作成の改良にかかる費用、(3)臨床研究にかかる費用、(4)研究代表者の学会発表・情報収集等のための旅費・参加費、英文での成果発表等にかかる費用(2)その他の消耗品など、(3)研究の進捗状況による新たな展開に必要となる費用、を見込む。特に最終年度として成果報告費用に充てる。
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