研究課題/領域番号 |
16K19837
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
山城 恒雄 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30772545)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 4次元CT / 慢性閉塞性肺疾患 / 気道 / 肺 |
研究実績の概要 |
平成28年度においては、4次元呼吸ダイナミックCTの解析を精力的に行い、様々な新しい病態生理学的知見を得ることができた。具体的には、喫煙者の4次元呼吸ダイナミックCTを解析すると、重症COPD患者では中枢気道(気管、主気管支、中間気管支幹、葉気管支)において肺の呼吸運動と連動しない奇異性運動(吸気時の気道虚脱、呼気時の気道拡張)が見られ、このような奇異性運動の程度はCOPDの重症度と相関することが確認された。この所見はすでに国際的な学術雑誌より英文論文として出版された。また、呼吸ダイナミックCTで左右の肺の運動を解析すると、COPDが重症になるほど、左右肺の動きの同時性が失われることが確認され、この内容は各種国際学会で発表した。さらには、本科研費に基づき導入することになった先進性の極めて高い画像解析ツールを用いて、呼吸ダイナミックCTでの5肺葉(右上葉、右中葉、右下葉、左上葉、左下葉)の動きを解析すると、COPDが重症化するにつれて、5肺葉間の動きの時間的連動性も失われていることが判明した。この内容は、平成29年初頭から種々の国際学会にて解析データを適宜増やしながら発表しているところである。これらの内容は平成29年度上半期を目標に、国際的な学術雑誌より論文化して出版する予定である。 これらの新たな病態生理学的知見は、将来的には奇異性運動が生じている部位での気道ステントの留置、呼吸リハビリテーションの効果としての肺運動の均一性の回復の確認等、COPDにおける臨床的な指標としての活用も可能なものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度中に国際的な学術雑誌での論文発表、および呼吸ダイナミックCTを用いた解析結果を各種の国際学会・国内学会で発表できており、現在までの研究の進捗状況としてはおおむね満足できるものと考えている。なお、本研究に係る研究成果の発表に関して、平成28年度中に2回の学会表彰を受けたので付記する。 第75回日本医学放射線学会総会(2016年4月、横浜):「4次元呼吸ダイナミックCTによる喫煙者の中枢気道面積および肺野濃度の連続的定量解析」Bronze Medal表彰 8th International Workshop on Pulmonary Functional Imaging(2017年3月、ソウル): 'Continuous measurement of lung density by dynamic-ventilation CT: synchrony in respiratory movements in COPD patients and non-COPD smokers' Best Scientific Presentation Award
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、まずは上記解析結果の論文化・国際的な学術雑誌からの出版を最優先事項とし、2年間の研究期間を総括するに相応しい業績を残すべく尽力する予定である。また当講座(琉球大学大学院医学研究科放射線診断治療学講座)に1年間の短期留学で外国人客員研究員として所属する、中国人放射線科医を研究協力者とし、呼吸ダイナミックCTのさらなる解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「その他」で予算計上した解析ソフトウェアのリース料、英文論文の出版費等において平成28年度での支出が当初見込みより少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度においては、すでに複数の英文論文をopen accessの英文雑誌より出版することが予定されており、その出版費として約100万円の支出が見込まれる。また、各種国際学会での研究成果発表もすでに決定しており、当初見込み額より旅費が大幅に増加する予定である。これらの支出を以て、受領した科研費の適切な執行が可能である。
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