研究実績の概要 |
本研究の目的は、乳房ダイナミック MRI 造影早期相における詳細な造影動態解析から得られる新規パラメータを用いた乳腺病変質的診断能の向上と新たな診断基準の構築である。MRI には時間‐空間分解能間に trade-off の関係がある。乳房 MRI においては乳腺病変の良悪性鑑別や乳癌広がり診断に必要な形態評価のためには高空間分解能での撮影が必要であり、これまでは高時間分解能での造影動態解析を同時に詳細に行うことは困難であった。近年、高速かつ高空間分解能 T1強調像の撮影が可能な新しい撮影方法が導入され、この問題点が解決されつつある。本研究がもたらす結果は、現在の乳房ダイナミック MRI の問題の 1 つである特異度の改善に寄与する可能性があり、不必要な生検や過大手術の回避に有効であれば臨床的意義が高いと考えられる。 初年度は研究開始前に行った予備解析モデルを踏襲し、臨床症例の蓄積継続を行った。MRIは当院に設置されている3テスラの装置を用い、16チャンネルコイルを使用。臨床的に乳腺病変に対し乳房 MRI 撮影が必要とされた症例に対して、早期造影動態解析に必要な高速撮像法と従来の診断法に必要な高空間分解能撮像法を1回の検査で同時に取得する工夫を行い、症例蓄積を継続した。平行して高速撮像法から得られた画像データを使用し、解析専用ソフトウェアを用いて早期造影動態解析パラメータ、time to enhancement (TTE) と maximum slope (MS) の算出を行った。 次年度は得られた造影早期新規パラメータ(TTE, MS)の解析結果と乳腺造影病変タイプ別(mass, non-mass enhancement, focus)の病理組織結果の対比、造影早期新規パラメータと従来法それぞれの乳腺病変診断能の対比を行い、統計学的解析を加える計画である。
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