研究課題
本研究は NBCA の重合速度と塞栓深度のコントロールをより正確にしうる混合物質を明らかにし、安全な血管塞栓術を行うための使用方法を確立することを目的としている。NBCA-リピオドール混合液の硬化時間はこれまで、静止系で液体に混合液を滴下することで測定された値を参考に血管内投与を行ってきた。しかしながら、臨床においては血管内投与すると、報告された硬化時間よりも血流停止は早期に生じているという経験的知見があった。NBCAによる安全な動脈塞栓術を施行するために、血流下でのNBCAの挙動を明らかにする必要があると考え、血流停止時間の測定を企図した。前年度までに脈動ポンプを用いた血流モデルを開発しており、これを用いてin vitroでの血流停止時間を測定した。同じNBCA濃度の混合液を用いて、コントロールとして静止系でのNBCA硬化時間も測定し、両者を比較した。NBCA-リピオドール混合液においては、血流停止時間が有意差をもって硬化時間より短いことが示された。ただし、リピオドールを含まない100% NBCAでは硬化時間の方が有意差をもって血流停止時間よりも短い結果となった。この結果より、血流内ではNBCAの硬化が完了する前に塞栓物質として作用していること、またリピオドールの粘稠性が血流停止に寄与していることが実証された。また、血流モデルに投与した混合液は実験後にX線撮像し、リピオドールの到達距離を測定した。NBCA濃度が低いほど、より遠位に到達しており、これまでの報告に合致する結果であった。さらに、リピオドールに代用する物質としてオリーブ油を用いて同条件での実験を行い、リピオドールと同様の結果を得ることができた。リピオドールNBCAの混合物質として使用可能であると考えられた。
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CardioVascular and Interventional Radiology
巻: 43 ページ: 630, 635
10.1007/s00270-019-02393-5.