まず、Ex vivo 実験において、血管モデルを用いてビーズの挙動を評価した。この結果、エピルビシン(抗がん剤)を100-300μmのサイズのディーシービーズ(球状塞栓物質)に含侵させた薬剤溶出性ビーズ (Drug eluting beads)の場合、ヨード濃度が約200 mgI/mLのヨード造影剤と混和すれば、薬剤溶出性ビーズの浮遊や沈殿が抑制されて良好な拡散が得られることが示された。 次に、In vivo 実験において、ウサギVX2肝腫瘍モデルに対して、薬剤溶出性ビーズを用いた肝動脈化学塞栓療法(DEB-TACE)を行い、 生体内薬物動態、ビーズの腫瘍内到達レベルおよび抗腫瘍効果を評価した。この結果、VX2腫瘍のような非多血性肝腫瘍においては、ビーズサイズが小さい方が腫瘍内部までビーズが到達しやすく、さらに、高い腫瘍内抗がん剤濃度が維持されることが示された。腫瘍の壊死率に関しても、ビーズサイズが小さい方が、高い腫瘍壊死が得られたが、統計学的な有意差は示されなかった。臨床においても、転移性肝癌のような非多血性肝腫瘍に対しては、サイズの小さいビーズを用いたDEB-TACEの方が、より効果的である可能性が示唆された。 今後の研究の展開としては、さらに小さなサイズのビーズや、多血性肝腫瘍である肝細胞癌 (HCC) モデルを用いた In vivo 実験において、ビーズの腫瘍内到達レベルおよび抗腫瘍効果を評価することが必要と思われる。
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