本研究の目的は,密封小線源治療に対する治療照射中の線量情報を可視化したリアルタイムモニタリング機能の技術を開発し,高精度で安全な線量投与が担保された,次世代の治療技術を組み込んだ治療支援システムの研究開発を実施する事である. 当該年度では,線源から放出された光子と有機蛍光体との相互作用により生じた可視光の蛍光現象をを時間系列情報として集積する測定システムを構築した.密封小線源に高線量率のイリジウム192,記録装置として相補型金属酸化膜半導体センサを有する固体撮像素子のビデオカメラ,有機蛍光体には水等価物質であるプラスチックシンチレータを検出器とした測定システムである.遠隔操作式密封小線源治療装置と連結した線源の輸送ケーブルを直接的に検出器に固定し,線源から放出された光子とプラスチックシンチレータとの相互作用により生じた蛍光現象を,ビデオカメラにより時間系列情報として集積可能である事を確認した.次に,婦人科疾患に対する遠隔操作式密封小線源治療を想定するため,線源の輸送ケーブルを水等価型ファントムの内部に挿入,固定し,水等価型ファントムの内部で停留した線源の線量情報を,同様の測定システムで蛍光現象が集積可能であるか試みた.結果的には,水等価型ファントムの内部に線源が停留している状況下では,水等価型ファントムの外部に飛び出した線源からの光子による蛍光現象は確認できたが,線源の停留位置等の情報を取得するまでには至らなかった.原因として,検出器に入射する二次的な光子(散乱線)の影響などが要因であると推測した. 今後,上記事項に対応した検出器に改良すれば,蛍光現象を集積可能と考え,実現すれば密封小線源治療に対して安全に線量投与可能な治療支援システムが構築でき,学術上及び臨床上の価値が高い成果になると考える.
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