我々は体細胞クローン技術により作成された重度免疫不全ブタ、Il2rg-KOブタに対してヒト肝癌細胞株を移植することにより、大動物でなければ困難な、抗腫瘍治療実験に適した肝細胞癌動物モデルの開発・有用性検討を行っているが、本研究では未だ明らかとなっていないIl2rg-KOブタに生着した肝細胞癌の血流動態および画像-病理相関についての基礎的な検討を行い、IVR治療や全身化学療法をはじめとした新規治療研究を行う上での実験動物としての妥当性を検討することを目的としている。昨年度までにびまん型および多発肝内転移型の肝細胞癌モデルの作成に成功し、また単結節型モデル作成のための予備実験としてヌードマウスの皮下にA431(類上皮細胞株)を植え込んだのち、4mm×4mm×4mmに切り出したものを免疫不全豚肝に移植し、免疫不全豚肝内に腫瘤を形成することに成功した。今年度はヌードマウスの皮下にHepG2(ヒトHCC細胞株)を接種し4週間後、5㎜程度になった皮下腫瘍を実験当日に採取し、2㎜各程度にトリミングした腫瘍を切開した豚肝に植え込んだ。4、6週間後にエコーで観察、7週間後にDynamic CTを撮像して評価し、単発性乏血性結節モデルの作成に成功したことを確認した。施設の都合でカテーテル室を利用できず、血管造影および血管造影下CTは施行できなかった。また、免疫不全豚の供給をこれ以上受けることができず、実験は一度しか施行できなかった。現在病理との相関を解析中である。今後、同様の方法で単結節型肝細胞癌モデルを作成し、血管造影下CTおよび病理相関解析を重ねていく予定である。
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