研究課題
本研究では、放射線で生じる修復不能な(困難な)DNA損傷(DNA‐DSB)の測定を切り口として、PLDR阻害が修復不能なDSB産生にどの様に影響を与えるか検討し、そのメカニズム(特にクロマチンリモデリング)を明らかにすることによって、新しいがん放射線治療のアイデアを提案することを目的としている。初年度の平成28年度では、高張処理によるPLDR阻害の分子メカニズムの解明のため、ヒト正常2倍体線維芽細胞に対して、高張処理(0.1M NaCl添加)条件下でX線を照射し、その影響を検証した。0.1M NaCl添加条件下でX線を6Gy照射し、1, 2週間培養すると、残存する修復できないDSB数(repair foci 数) が約1.5倍に増加した。さらに高張処理により放射線誘発のdamage量が変化するか、あるいはrepair systemが影響を受けるのかを調べるため、0.1M NaCl添加条件下でX線を1 Gy照射し、照射1時間後から24時間後に残存するDSB数を観察した。照射直後のDSB数には有意な差が見られなかったことから高張処理によるクロマチンの凝集は、放射線誘発のdamage量の変化をもたらすのではなく、その後のrepair systemに影響を与えるということがわかった。これらより、高張処理によりヘテロクロマチン形成が起こり、それがrepair systemに影響を与えるという分子機構が示唆され、現在研究を進めている。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、高張処理によるPLDR阻害の分子メカニズムの解明のため、ヒト正常2倍体線維芽細胞を用いて実験を行った。高張処理によるクロマチンの凝集は、放射線照射によって生じたDNA損傷のrepair systemに影響を与えるということを発見した。また、PLDR阻害メカニズムを応用した、がん細胞におけるヒストン脱メチル化阻害剤の放射線増感効果の検証についても取り組み始めた。
次年度の平成29年度は、DSB修復に関係するクロマチンリモデリング因子の挙動を解析することで、高張処理によるPLDR阻害の分子メカニズムの解明に引き続き取り組むとともに、ヒストン脱メチル化阻害剤の放射線増感効果の検証に関しても進めていきたい。
検討項目の実施順位を変更したことにより、薬品、器具の使用量が予定より少なかったため、次年度使用額が生じた。
現在実験が進んできているため、薬剤および器具の使用が進んでいる。国内および国際学会での研究成果の発表も予定しているため、旅費等の支出も行う予定である。
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Oncotarget
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10.18632/oncotarget.16602.