研究課題
放射線で生じる修復不能なDNA二重鎖損傷の測定を切り口として、潜在的致死損傷修復阻害が修復不能なDNA二重鎖損傷産生にどのように影響を与えるか検討し、そのメカニズムを明らかにする。さらにそれを応用した新しいがん放射線治療のアイデアを提案することを目的としている。初年度では、ヒト正常2倍体線維芽細胞に対して高張処理(0.1M NaCl添加)条件下でX線を照射し、その影響を検証したところ、0.1M NaCl添加条件下でX線を照射し1, 2週間培養すると修復できないDNA二重鎖損傷数が約1.5倍に増加した。さらに0.1M NaCl添加条件下でX線を照射し、照射1時間後から24時間後に残存するDNA二重鎖損傷数を観察したところ、照射直後のDSB数には有意な差が見られなかった。2年目の平成29年度では、初年度の結果を基に、二重鎖損傷修復に関係するクロマチンリモデリング因子の挙動を解析するとともに、ヒト前立腺がんを用いてヒストン脱メチル化阻害剤の放射線増感効果の検証に取り組み始めた。ヒト前立腺がん細胞株に対し、ヒストン脱メチル化阻害剤を処理すると、濃度依存的に細胞増殖が抑制された。また放射線に対する感受性を増強する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度では、ヒト前立腺がんを用いてヒストン脱メチル化阻害剤の放射線増感効果の検証に取り組み始めた。ヒストン脱メチル化阻害剤の濃度依存的な細胞増殖阻害が観察され、放射線感受性の増強が期待できる可能性が示唆された。
引き続きヒストン脱メチル化阻害剤の放射線増感効果の検証に関しても進めていくとともに、DSB修復に関係するクロマチンリモデリング因子の挙動を解析し高張処理によるPLDR阻害の分子メカニズムの解明に取り組んでいきたいと考えている。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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