ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、がん集積性のホウ素含有薬剤を投与した後、がん組織に熱中性子線を照射してアルファ線を発生させることで、がん組織を破壊する方法である。これまでにp-boronophenylalanine(BPA)を用いたBNCTの臨床試験が行われており、また、BNCTの適用可否の診断に18FでBPAを放射性標識した化合物(FBPA)を用いることが有効であると報告されている。しかしFBPAを用いた診断の問題点として、BPAとFBPAの体内動態が異なる可能性があること、FBPAは被曝することなどが挙げられている。そこで、本研究では、それらの問題点を改善するため、光イメージングで薬剤の体内挙動を把握できる新たなBNCT用ホウ素含有薬剤を開発することを目的としている。 本年度は、これまでに合成した新規ホウ素含有化合物ががん組織にどの程度集積するのかを定量的に評価するために、以下の検討を行った。 (1) 放射性同位元素を導入した新規ホウ素含有化合物類似化合物の設計・合成: これまでに合成した新規ホウ素含有化合物の体内動態について定量的に評価するために、放射性ヨウ素(125I)を導入した化合物の設計・合成をした。 (2) インビトロ評価: 今回合成した化合物について、アルブミンに対する結合親和性を調べた。その結果、本化合物は、これまでに合成した新規ホウ素含有化合物と同等のアルブミン結合親和性を示した。 (3) インビボ評価: 担がんモデルマウスを用いた体内動態評価を行った。その結果、今回合成した化合物が、所期の通り、昨年度合成した化合物と同程度、移植がん部位に集積することをインビボ蛍光イメージング法により認めた。また、その集積量は5.8%dose/gであった。
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