本研究の目的は心筋血流イメージングを用いた心筋血流の定量性を向上させることである。昨年度までの研究結果から、体動アーチファクトの大部分は呼吸振幅の深さが撮影中に変化することが主要因であることが判明した。まず、根本的な体動補正の方法として、撮像1フレームごとに用手的に位置補正を行うことを試みた。半導体SPECTではPETと比較して単位時間あたりのガンマ線カウントが少ないため、1フレームのみの画像から左室心筋の位置を把握することが困難で、隣り合う前後の複数フレームを重ねて画像化することで対処した。次に、入力関数および出力関数を得るための関心領域の設定に関しては、心筋集積の高い撮像後半の画像を用いていたが、撮影初期のフレームの大部分が尾側にずれていたため、関心領域を設定するフレームの時間帯を自由に可変できるようにし、1フレームごとの位置補正と併せて用い、精度を高めるよう工夫した。体動補正についてはPETでも同様の検討をおこなった。結果、下壁を中心に生じていた測定エラーをある程度軽減できた。吸収・減弱補正法に関しては、今年度あらたに再構成されたSPECT画像の心筋画像から心筋を中心とする縦隔のみに軟部の減弱係数を付加し、胸壁を無視した減弱補正を試みた。しかし、この方法に関しては無補正に対して有意な優位性は認められなかったため、国外の先行研究と同様に半導体SPECTによる心筋血流定量においてはPETと異なり、必ずしも減弱補正の必要性はないと結論づけた。コンパートメントモデルでの解析はガンマ線感度の低いSPECTではエラーが多いため、入力・出力関数のグラフの線下面積から定量値を求める簡易的な定量モデルを構築し、コンパートメントモデルとの優位性について今後検討していく。これらの研究結果については国内外の学術集会で発表を行った。今後も学術集会および論文等で発表を予定している。
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