核医学検査の断層撮影法である単光子放射断層撮影(SPECT)と陽電子放射断層撮影(PET)は、放射性医薬品を被検者に投与し、投与された極めて微量の放射性薬剤の体内放射能分布を画像化することができるため、脳血管障害や虚血性心疾患の診断技術として広く普及している。近年では分子イメージング技術として臨床研究にも活用されているが、これらの断層撮影法は測定原理上、量子雑音が多く、その程度に応じて術者(医療従事者)が任意に設定した各種雑音除去処理を施すため、再現性、標準化および根拠に基づく医療の構築の妨げになっている。 本研究では、術者の設定を必要としない普遍的かつ高精度な雑音除去法(高精度WaveletDenoising 法)を研究開発した。本研究期間は3年間であり、①臨床試験を想定した臨床用の実機による検討、②超短時間収集や超低投与量収集を想定した臨床用の実機による検討、③精度および実用性の更なる向上、から構成された。2018年度は高精度WaveletDenoising 法の問題点(1画素当たり10 counts未満の超低カウント収集)も含めて論文執筆を行った。 前年度までの研究実績で超低カウント収集では信号成分と雑音成分の分離が難しく、かつマトリクスサイズが64X64以下では効率よく雑音除去できないことが示唆された。信号成分と雑音成分の分離が難しくなる超低カウント収集または大きな画素サイズでの収集は、収集系の問題でもあるため装置開発も含めた新たな研究を行う必要があると考えられた。また、核医学画像は雑音除去法以外にも各種画像処理を行うため画一的な標準化を行うことは困難であり、画像の調和化に関する研究も重要であると考えられた。
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