研究実績の概要 |
IL-22BPノックアウトマウスを用い、脾臓におけるB細胞の成熟について検討を行ったところ、制御性B細胞とおぼしき集団の増加を認めていたが、検討をすすめていくに従い、結果の再現性が乏しく、当初の実験計画の遂行は困難な可能性が考えられた。そこで、マウスを用いたvivoの実験系の後に、検討を予定していた、ヒト末梢血を用いた検討をすすめることとした。当院の倫理委員会にて許可を得たプロトコールに則り、放射線療法を施行した患者の照射前および、照射中、照射後の血液を採取し、血しょうおよび、末梢血単核球(PBMC)を抽出した。疾患や、病態、併用療法などによる患者選択は行わず、43例の検体を採取した。アブスコパル効果の発現の機序のひとつに、CD8陽性T細胞による、非照射部への免疫学的抗腫瘍効果があげられるため、検討項目のひとつとして、末梢血におけるT細胞の成熟について、PBMCを用い細胞表面マーカー(CD8,CD27,CD57,CD279等)にて染色を行い、フローサイトメトリーを用い検討を行った。症例において、照射回数を重ねるにつて、末梢血中のT細胞の成熟度が増したものもあった。今後、線量や臨床学的経過、症例などの選択を行い、さらなる動態の検討をすすめたい。また、既存の報告のように、stageⅣなど、臨床学的に末期の状態である患者検体においては、末梢血中のT細胞におけるCD279の発現上昇を伴う症例を認め、放射線療法の介入により、それらが減少する傾向も認めた。その挙動についても検討をすすめたい。また、PBMCや血しょうサンプルの確保もすすんでおり、今後、臨床経過などにより、サンプルを選択し、他の実験手法を用いた、解析も検討していく予定である。
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