研究課題/領域番号 |
16K19867
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
氷室 秀知 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), がんワクチン・免疫センター, 医師 (90772567)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | IL-22 |
研究実績の概要 |
wildタイプマウスを用い、アブスコパル効果について検討を行っている。マウス皮下2箇所に腫瘍を移植し、1箇所の腫瘍のみ放射線照射を行い、非照射部腫瘍への影響(アブスコパル効果)の評価を、各種細胞株(LLC,B16F10等)を用いて施行している。腫瘍形の推移を計測し、腫瘍を摘出する。一部をホルマリン固定し、組織の評価を行っている。また、腫瘍の一部をホモジナイズし、腫瘍浸潤リンパ球の抽出を行っている。脾臓および末梢血からも同様にリンパ球を精製する。精製したリンパ球を、各種抗体を用いて、蛍光免疫染色を行い、フローサイトメトリーにて検討を行っている。また、血漿の保管も行っている。フローサイトメトリーの結果より、腫瘍部のみへの放射線照射に伴い、末梢血や脾臓中の免疫細胞のpopulationの変化を認めている。腫瘍の局所照射が、全身性の免疫への影響を及ぼし、抗腫瘍免疫の賦活化に関与している可能性を得ている。これらの変化は、T細胞が主体であり、B細胞への影響は軽度であった。そのため、当初計画していたB細胞について評価するのは困難であった。 また、放射線治療施行患者の末梢血を、当施設倫理委員会の承認後に、サンプリングを行っている。血漿および末梢血単核球(PBMC)の分離を施行し、検体の保管を進めている。PBMCに関しては、各種抗体による免疫蛍光染色を行い、フローサイトメトリーを用いた検討を行っている。また、血漿に関しては、マルチプレックスおよびELISAにて、サイトカインやケモカインをはじめとした液性因子の評価を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
マウスを用いた実験(当初予定していた、IL22BPノックアウトマウスを用いた検討など)が、研究者の実施施設の移動や社会情勢が重なり、施行が困難であった。そのため、別のアプローチを構築し、検討を行なわざるを得ない状況のため、検討が難航している。
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今後の研究の推進方策 |
現在検討を進めている、アブスコパル効果検証のためのモデルマウスの血漿成分等を用いて、IL-22およびIL-22BPについてELISAにて評価を行う。それらの値と、腫瘍形および腫瘍浸潤リンパ球の関係性などを評価する。その結果次第では、IL-22中和抗体などを用いて、反証検討を行う。現在のところは、B細胞については大きな変化を認めていない状況であるため、関与が推測されるT細胞について、anti-CD8抗体やanti-CD4抗体などを用い、腫瘍形の変化やアブスコパル効果の発現についての反証を計画する。摘出腫瘍から、RNAを精製し、RNA-seqによる網羅的な検討をおこない、IL-22に関連する遺伝子やPathwayの変化について評価する。 また、放射線治療施行患者の血漿成分を用いて、同様の検討を行う。clinical responseや予後などとの関連性について検討する。マウスモデルの結果と、ヒトサンプルの結果とを総合的に評価し、より詳細なメカニズムの解明に迫る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
検討のための実験に用いる試薬や消耗品などの物品の購入や、研究結果の公表のための各種手続きの費用などが必要と考えらられる。
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