脳MRI 画像を用いたVBM(voxel-based morphometry)などの脳形態画像統計解析は、皮質厚や灰白質容積の測定結果が撮像機種や撮像シーケンスなど様々な要因に影響されることが知られている。今回の研究では3種類のMRIを用いて同一被験者を撮像することで、撮像機種の与える影響および撮像機種の影響を軽減する方法を模索している。従来、GE社製MRIで脳画像解析を行う際にはSPGRにて高分解能T1強調画像を撮像していたが、MPRAGEにて撮像することで、Siemens社製MRIで測 定した皮質厚および脳容積の結果と近似した結果が得られることが判明した。この結果は複数のMRIを用いて多施設共同研究を行う際に、統一した撮像条件を設定する上での重要な判断材料になる。 また、多施設共同研究における脳画像統計解析を行う際に施設もしくは撮像したMRI機種を共変数とし、統計解析を行うことが一般的となってきているが、これらを共変数と設定することが、統計解析において有害な影響を与える可能性があることが、今回の研究結果から判明した。 今回の研究では日本国内において広く行われているアルツハイマー型認知症の脳萎縮の評価を目的としたVSRADの撮像条件の最適化についても検討を行っている。従来は3-5分程度の撮像時間が必要とされているが、15秒程度の短時間撮像でも類似した脳萎縮の測定結果が得られることが判明した。短時間の撮像手法を用いることで、日常臨床におけるMRIの検査時間を短縮できると考えられる。
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