磁気共鳴画像法(MRI)により得られる磁化率強調像(SWI)は脳循環代謝の異常に伴う静脈血中の脱酸素化ヘモグロビンの増加を静脈増強所見として画像上で捉えることができるが,SWI上の所見の僅かな変化を捉えるには経験を要し,観察者間でも不一致が生じるという問題がある.一方でデータに隠れたパターンや表現,判断基準をコンピュータに学習させ,問題解決能力を獲得させる機械学習が近年発達してきている.本研究では脳循環代謝測定のゴールド・スタンダードとなっている酸素15 PET検査画像を教師としたSWIの機械学習により,脳循環代謝異常の検出を試み,その精度及び有用性を明らかにする.そして,本手法による脳循環代謝異常の診断支援システムを確立させることを目的としている. 本研究では前年度までにconvolutional neural network (CNN)でSWIの患側断片を学習し,酸素摂取率(OEF)の患側健側比が1.05以上か否かを判別する分類器の作成を試み,正答率91.0%でOEF亢進を判別できる分類器の作成に成功した.本年度は更なる精度の向上を目的に,空間情報を失わずに画像特徴の学習を行うことができるCapsule Networkの適用を試みた.しかし,Capsule Networkで得られた正答率は78.7%とCNNより低い値であった.本結果について学会にて発表した. 本研究の成果を論文に纏めるのに先立ち,学習データ以外のテストデータによる検証を行ったところ,判別成績が著しく低下した.従って,作成した分類器は強く過学習していることが判明した.今後訓練データ数を大幅に増やすなどの対策が必要である.
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