研究課題/領域番号 |
16K19875
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
田桑 弘之 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, 研究員(任常) (40508347)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小動物PET / 蛍光顕微鏡 / マルチモダルイメージング / 認知症モデル動物 / 実験装置開発 |
研究実績の概要 |
複雑な生命現象を理解するためには、多様な測定装置により多角的に生命現象を観察し、相互に比較していくことが重要ある。特に、PETはヒトを含む動物の生体内分子動態を可視化できる有効な装置であるが、時空間解像度が低いという問題がある。蛍光顕微鏡などの光イメージングは、測定に侵襲処置が必要なため実験動物を対象とするが、高い時空間解像度をもつ。そのため、PETと蛍光顕微鏡との同時測定装置は、相互の測定値を補い合う理想的な補完関係を作れるが、未だ開発には至っていない。本研究では、申請者らが開発したPETと光イメージングと動物実験の3つの要素技術を組み合わせることで、世界初の小動物PETと蛍光顕微鏡の同時測定装置の開発を行った。初年度の開発により、前述のPETと蛍光顕微鏡の同時測定を覚醒状態のマウスより行うことが可能になった。この新規装置の評価にために、[11C]Raclopride-PETとレーザースペックルによる光イメージングをおこなった。実験結果より、同時測定された2つの測定値は、先行研究において個別に測定された測定値と一致しており、我々の同時測定システムを用いて安定したデータが得られることが明らかとなった。これらの研究成果は、いくつかの学会で発表した後に国際誌に掲載された。今後は、この新規装置で、蛍光特性をもつPETトレーサーのPETと蛍光顕微鏡による同時測定を試みる。最終的に、臨床PETで使われているトレーサーの真値を明らかにし、その生物学的な理解を深化させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度は、PETと光学顕微鏡の同時測定システムの開発を行った。OpenPETは、既に開発されている装置をそのまま応用することで開発期間と製作費を軽減した。光イメージングについては、OpenPET側面の開放スペースに適合する顕微鏡を自作した。微弱な蛍光を検出するために対物レンズを測定対象(例えば動物の脳表)に可能な限り近づける必要があるため、細い形状の顕微鏡を作成してPET検出器と検出器の間に挿入した。動物は、専用の覚醒マウス用固定具を自作したものを設置した。この装置を用いて、世界初の覚醒マウスを用いた[11C]Raclopride-PETとレーザースペックル血流光イメージングの同時測定を行った。同時測定された[11C]Raclopride-PETとレーザースペックル血流光イメージングは、個別に測定された先行研究データとよく一致していた。これらのデータは、国際誌Physics in Medicine & Biologyに投稿し、掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、PETと蛍光顕微鏡の同時測定システムの開発に成功し、さらに研究成果を論文化するなど、当初の計画以上に順調に研究が進んでいる。研究の第2段階として、開発システムの医学・生物学研究への応用を進める。本年度では、主に2つの方向性で研究を進める。 1つは、蛍光特性をもつPETトレーサーであるPBB3のPETと蛍光顕微鏡の同時測定である。前年度に行った蛍光顕微鏡の測定は反射光を用いていたが、ここでは蛍光を利用したイメージングを行う。測定法によるが一般的に反射光と比較して蛍光は非常に信号が微弱なので、より強い蛍光を検出するための一定の工夫が必要になると考えられる。 2つ目は、PBB3の二光子励起によるイメージングである。申請書にも記載したが、この研究の将来的な目的は、二光子顕微鏡とPETの同時測定システムの開発にある。そこで、PBB3の二光子顕微鏡による生体脳イメージングを行い、同時測定システムの開発に向けた基盤データを測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が計画以上に順調に進んだため、当初必要と考えていた装置製作費の使用額が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度、使用しなかった残金は、今年度にさらに多くの論文を作成するための謝金や論文投稿費に使用したいと考えている。
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