研究実績の概要 |
妊娠・出産経験をした女性は乳がんのリスクが低下することが知られている。しかしながら、妊娠・出産経験による放射線誘発乳がんのリスクの減少とその分子メカニズムは明らかになっていない。本研究は、放射線被ばく後の乳がんリスクが妊娠・出産経験によってなぜ変化するかを明らかにするために、乳がんのサブタイプ、ホルモン変化、乳腺細胞の分画の変化が放射線被ばくや妊娠・出産経験でどのように変化するかをラット乳がんモデルで明らかにすることを目的とした。本年度は、これまでの動物実験で取得したラット乳がんを免疫化学染色法によるサブタイプの分類と、ホルモン血清取得のための動物実験、乳腺細胞の分画をフローサイトメトリーで解析するための条件設定を実施した。乳がんのサブタイプ分類ではER, PgR, Ki-67, HER2をマーカーとして用いて、約200検体のラット乳がんを染色した。ラット乳がんは、ホルモン受容体(ERとPgR)陽性と陰性のどちらのタイプも存在していた。また放射線被ばく後のホルモン変化を明らかにするために、思春期前または後のラットに放射線照射し、その後妊娠・出産の有無で実験群を分類して発がん過程(生後22週齢)で解剖した。これまでに動物実験を完了して、約60検体の血清を取得した。乳腺細胞の分画の実験では、ラット乳腺をコラゲナーゼ処理によって細胞を単離する実験系を確立した。単離した細胞をCD49f、CD24抗体を使用してフローサイトメータで解析することによって乳腺の内腔および基底細胞に分画することに成功した。さらに、CD49f、CD24、CD61抗体を使用することにより内腔前駆細胞と思われる細胞の分画にも成功した。
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