研究課題
妊娠・出産経験は乳がんリスクを減少させるが、若い年齢での放射線被ばくによる乳がんリスクの増加が、妊娠・出産経験によってどのように変化するかは明らかになっていない。本研究ではラット乳がんモデルを用いて、乳腺の発生が劇的に変わる思春期前後の放射線被ばくと成体期の妊娠・出産経験が、その後の乳がんリスクにどのような影響をもたらすかを明らかにすることを目的とした。思春期前または後(3または7週齢)のSprague-Dawley 雌ラットに放射線(γ線, 4Gy)を全身照射後、もしくは無処置のまま、妊娠、出産、授乳を経験させる群(経産群)と経験させない群(未経産群)に分別し、乳腺腫瘍の発生を観察した。乳がんと診断された腫瘍に関してホルモン受容体であるエストロゲンおよびプロゲステロン受容体(ERおよびPR)とKi-67の発現を免疫組織化学染色で評価し、ホルモン受容体陽性(ER+PR+)乳がんとして分類した。一部のラットは、出産から8週間後に解剖を行い、血清中のプロゲステロン濃度を免疫測定法により調べ、同未経産群と比較した。無処置群と同様に思春期前に被ばくした群において、妊娠・出産経験による乳がんの予防効果が観察された。妊娠で予防されていた乳がんは、ER+PR+乳がんであり、特に思春期前に被ばくした群で妊娠による影響が顕著であり、Ki-67の発現も未経産群と比べて有意に減少していた。加えて、思春期前の被ばくと妊娠・出産経験は、血清のプロゲステロン濃度を未経産群と比べて有意に減少させていた。一方、思春期後に被ばくした群では、妊娠・出産経験によるこれらの変化は観察されなかった。これらの結果は、妊娠による乳がんの予防効果は放射線被ばく時年齢で異なることを示唆している。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
保健物理
巻: - ページ: -