研究課題
本研究の目的は、細胞機能調整技術を活用し、放射性核種(RI)封入リポソームによる固形がんの内用療法を最適化することである。放射性感受性の低い固形がんに対し、内用療法を成功させるためには、1) 腫瘍への高いRIの集積と2) 正常組織への非特異的RI集積の低減が重要である。つまり、3) 正常組織と比較し、RIの腫瘍内集積が高いほど内用療法の良い治療成績が期待できる。まず、複数の腫瘍皮下移植マウスに、In-111標識されたDTPAやEC等を封入したリポソームを投与し、体内動態を検討した。In-111 DTPAでは網内系組織(肝臓、脾臓)からの排出が見られなかったが、In-111 ECでは排出が確認された。HPLC (gel permeation chromatography)を用いて、リポソーム(径100 nm)と低分子を分離することにより、腫瘍内及び肝臓内でのリポソームの分解能を評価した。網内系クリアランスが確認されている111In-ECの場合、肝臓内におけるリポソームの分解が111In-ECの網内系クリアランスに重要な要素であることが分かった。また、RAW264細胞にIn-111 EC DSPGリポソームを貪食させ、細胞内に残るIn-111 ECの放射活性を測定した。In-111 DTPA DSPGリポソームと比較して、In-111 EC DSPGリポソームを貪食したRAW264細胞では放射活性の集積の低下が確認されたことから、トランスポーター阻害剤を添加し、どのトランスポーターがIn-111 ECクリアランスに関与しているのかを検討した。さらに、これらの結果から、腫瘍内並びに肝臓内マクロファージ系細胞の分析やリポソームの腫瘍内集積を高める因子等の解析を進めている。
すべて 2017
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Cancer Science
巻: 108(11) ページ: 2273-2280
doi: 10.1111/cas.13392