今年度は、機械学習や深層学習を使った肺結節のコンピューター支援診断をメインに研究を行った。まず、CTの肺結節のコンピューター支援診断用の大規模なデータベースである京都大学の肺結節データベース(総数1240症例)を用いて、肺結節鑑別について従来の機械学習に対する深層学習の優位性を示した。過去に1000症例を超えるデータベースでCTの肺結節鑑別のコンピューター支援診断の評価を行った研究はなく、この研究が大規模データベースを利用した肺結節鑑別のコンピューター支援診断の最初の研究と思われる。この研究では、大規模なデータベースを使って、これまでの機械学習に対して、深層学習で精度が10%強改善することが示せた。次に近年問題とされる機械学習・深層学習の出力の根拠が人間には不明瞭で、人間が機械学習・深層学習の出力を信頼できないという問題について検討を行った。ベイジアンネットワークと放射線科医が記録した診断根拠を用いることで、コンピューター支援診断のソフトウェアが出力した肺結節鑑別の結果について根拠を提示することが可能となった。今年度は最終年度であるので、研究のまとめとして深層学習のレビュー論文の執筆や英文教科書の分担も行った。これらのレビュー論文や教科書が深層学習を用いた肺結節鑑別のコンピューター支援診断の進展に有用になるこが期待される。
上記の他に、最終年度では肺結節鑑別に肺気腫の定量評価が有用であることを示したり、深層学習が他の疾患に有用であることを示した。
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