研究課題
H30年度までに、ラット脂肪肝、肝温虚血再灌流、70%肝切除等の動物実験モデル、質量分析イメージング(IMS)法による肝組織の脂質・脂肪酸の網羅的解析法を確立した。また、脂肪肝の微小環境を模倣し、肝癌細胞株をオレイン酸・パルミチン酸添加下で培養し、増殖、悪性度変化等を分子生物学的、脂質・脂肪酸分析により評価した。温虚血再灌流では虚血中に虚血時間依存的にLysophosphatidylinositol(LPI)や胆汁酸類が肝組織のZone1に集積し、その傾向は脂肪肝で増強された。LPI投与は肝細胞株、星細胞株の細胞質Ca2+濃度を速やかに上昇させた。しかし、Ca2+ burstは必ずしも細胞死を増加させず、37℃低酸素中の細胞死も促進させなかった。LPIが傷害促進要因か、保護性のストレス応答か、脂肪酸側鎖(m/z)の相異の影響等の検討が必要である。ラットのin vivo肝切除後の残肝は、炎症、接着、酸化ストレス、mitosis等が増強され、Pringle法は肝内転移、異時性発がんの何れにおいても癌増殖を助長する素因となることが懸念される。H30年度にpreliminary実験を検討したが、北海道胆振東部地震時に一部の試料が融解し、破棄した。研究期間を延長し再実験に努めたが、限られたエフォートと研究費の中で全てを再検討はできず、一部の動物実験を断念した。しかし、細胞実験、メカニズム解析に注力し、LPI の役割について新たな可能性を見出した。引き続き、LPIとその特異的受容体 (GPR55) が肝虚血再灌流、肝切除後の傷害、再生、癌細胞発育に与える影響を、種々の阻害剤、賦活剤を用いて検討中である。これらの検討は、肝癌細胞の微小環境におけるリゾリン脂質、脂肪酸の役割に焦点をあてる新たな試みであり、新たな細胞間相互作用の発見と治療法開発の基礎的知見になるはずである。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Journal of Surgical Oncology [Epub ahead of print]
巻: Epub ページ: Epub
10.1002/jso.25910
Journal of Clinical Medicine
巻: 8 ページ: 1818~1818
10.3390/jcm8111818