研究課題
術前化学療法を受けた271例の乳癌患者の解析の結果、内臓脂肪量は有意にBMI(Body Mass Index)と相関していた。内臓脂肪量が多い群は有意に遠隔転移再発期間が短縮しており、多変量解析においても内臓脂肪量は独立した予後因子であった。さらに内臓脂肪のCTが低下している群は有意に遠隔転移再発期間が低下していた。次に、背景因子を用いてpair-matchさせた早期乳癌患者106例に対して、Insulin-like growth factor(IGF) familyと炎症と肥満との関係を検討した。その結果、BMIのnormal群とoverweight/obese群との比較において、IGF-1とIGFBP3は各群間で有意差は認めなかった。その一方で、overweight/obese群はnormal群と比較して有意にHOMA-Rが高かった。さらに、IL-6, CRPはoverweight/obese群はnormal群と比較して高い傾向にあった。現在免疫染色によるIGF-1RとIL-6Rの発現状況を上記の結果と併せて検討中である。以上の結果を米国臨床腫瘍学会とSan Antonio乳癌学会にてposter発表し、現在論文投稿準備中である。今回の研究から、内臓型肥満に起因するインスリン抵抗性は早期乳癌患者において予後因子となる可能性が高い事が示唆された。BMIだけでは評価できない内臓型肥満と内臓脂肪の質がインスリン抵抗性を通して乳癌術前化学療法後の予後に影響する事は新しい知見であり、我々の過去の研究結果から日本人女性は肥満による影響を欧米人よりも多く受ける可能性があるため、今後さらに研究を発展させていく必要がある。今後の展望として、内臓型肥満型乳癌患者に対して術後補助療法後の栄養指導、運動療法を含めた積極的な介入が予後を改善するかを前向き臨床試験で評価することを計画している。
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Molecular Clinical Oncology
巻: February 6(2) ページ: 266-270
10.3892/mco.2016.1101.