研究課題/領域番号 |
16K19888
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
土田 純子 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (90769415)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脂質メディエーター / スフィンゴシン-1-リン酸 / 乳癌 / 癌間質液 |
研究実績の概要 |
スフィンゴ脂質であるスフィンゴシン-1リン酸(以下S1P)は、細胞情報伝達物質として働く脂質メディエーターであるが、生体内においては、癌が産生するS1Pに加えて、宿主側が産生するS1Pも存在し、癌と宿主の相互作用におけるS1Pの生理的機能はいまだ不明である。申請者は「癌間質液中のS1Pが高濃度に保たれ、癌間質液中のS1Pが癌細胞を刺激することによって、癌の浸潤・転移に寄与している」という仮説を立て、本研究を企画した。本研究の目的は「新規に開発した間質液収集法を用いて、癌および正常乳腺組織の間質液中のS1Pを定量することで仮説を検証すること」である。CRISPR/Cas9システムを用いて、SphK1ノックアウト(KO)乳癌細胞株を確立し、乳癌ES細胞を用いてC57BL/6マウス単独系統のSphK1KOマウスを作製、同種同一系統の癌移植モデルを確立した。作製したSphK1遺伝子改変乳癌細胞株をSphK1KOマウスの乳腺に同所性に移植を行い、腫瘍を作製した。癌および正常乳腺組織の間質液中のS1Pを定量し、癌部の間質液中のS1P濃度が、S1P受容体阻害薬によって低下し、腫瘍の増殖も抑えられることを発見した(J Mammary Gland Biol Neoplasia 2016)。動物モデルにて、癌と宿主のSphK1が癌の発育進展に影響があることを発見し、現在解析中である。さらに、乳癌患者の癌および正常乳腺組織の間質液中のS1Pを定量した(J Mammary Gland Biol Neoplasia 2016)。乳癌原発巣におけるSphK1の発現とS1P濃度、原発巣のS1P濃度とリンパ節転移の頻度が相関することを発見した(J Surg Res 2016)。血液中および癌組織中のS1P濃度を定量し、臨床病理学的因子との比較検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は課題研究AとBについて研究を推進し、計画通りに進行している。以下に進捗状況の詳細を記載する。 課題研究A 遺伝子編集ツールであるCRISPR/Cas9システムを用いて、SphK1ノックアウト(KO)乳癌細胞株を確立し、さらに、乳癌ES細胞を用いてC57BL/6マウス単独系統のSphK1KOマウスを作製、同種同一系統の癌移植モデルを確立した。作製したSphK1遺伝子改変乳癌細胞株をSphK1KOマウスの乳腺に同所性に移植を行い、腫瘍を作製した。SphK1KOマウスにSphK1KO細胞を移植する動物実験を行い、癌と宿主のSphk1が癌の発育進展に、影響があることを発見し、現在解析中である。 課題研究B 乳癌手術患者を対象とし、血清および血漿中のS1P濃度、ならびに癌組織中のS1P濃度を質量分析器を用いて定量した。病理学的因子(組織型、サブタイプ、TNM Stage)、 化学療法感受性、長期成績(再発・予後)などのデータベースの作成しており、S1P濃度と臨床情報との統合解析を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は主に課題研究AとBについて研究課題について研究を推進し、論文化を行う。 課題研究A 乳癌移植マウスモデルにおける癌間質液中S1Pの測定および癌浸潤・転移における癌間質液S1Pの役割の解明:SphK1をKOもしくは過剰発現させた乳癌細胞を、SphK1KOおよび野生型マウスに各々移植し、各々の癌移植動物に対し、タモキシフェンなどの抗ホルモン剤や、アドリアマイシン、パクリタキセルなどの殺細胞薬を投与し、薬剤治療効果と癌間質液中S1P濃度の変化を調べる。さらに、S1P受容体特異的阻害薬(FTY720、W-146、ONO-4641)やSphK1特異的阻害薬(SK1-I)とホルモン療法や殺細胞薬との併用療法の効果を検証し、S1P標的治療薬の可能性について検証する。 課題研究B 乳癌患者における癌間質液中S1P測定と臨床的意義の解明:癌間質液中S1P濃度が高いと血清S1P濃度が上昇するとともに、癌のリンパ管浸潤が促進されリンパ節転移を促すという仮説の下、乳癌および正常乳腺組織におけるSphK1のリン酸化を免疫組織化学により検出し、血清中のS1Pを質量分析により定量することにより、癌間質液中S1PとSphK1リン酸化および血中S1P濃度との関係を検証する。また、S1P濃度と臨床病理学的因子および長期成績との比較を行い、癌間質液中S1P濃度と癌転移に関わる病理学的因子や、化学療法感受性、長期成績(再発・予後)などについて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬の購入等に若干の遅れがみられ、予算が繰り越しとなった。
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