研究課題/領域番号 |
16K19889
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 友理 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (40772075)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胃癌 |
研究実績の概要 |
進行再発胃癌は依然として予後不良であり、克服すべき重要な課題である。胃癌腹膜播種においては、タキサン系薬剤の腹腔内投与を含めた新たな治療ストラテジーの開発が進んでいるが、肝転移をはじめとする血行性転移においては十分に制御されているとは言い難い。原発巣から生じた遊離癌細胞が生着・増殖して転移巣を形成するには多段階の過程が必要であり、また転移先臓器や転移経路によってその分子学的背景は異なるとされ、これまで様々な議論がなされてきた。そこで我々は同時性に、かつ肝に限局した遠隔転移を有する症例から得た組織を対象に、次世代シーケンサーを用いたTranscriptome解析を行い、膜貫通型蛋白の一つであるsynaptotagmin 7(SYT7)が胃癌原発巣において胃非癌部に対し約21倍の発現度で有意に発現亢進していることを見出した。SYT7の胃癌細胞株における機能解析を行うため、CRISPR-CAS9法によってstable SYT7-KO株を樹立することができた。SYT7-KO株では親株に対して、有意な増殖能、浸潤能、遊走能、接着能の有意な低下を認めた。また、SYT7がどのような癌関連分子(EMTを含む)やsignaling pathwayと関連して胃癌悪性度に関与しているかを調べるため、Human Epithelial to Mesenchymal Transition RT2 Profiler PCR Arrayによって84種の癌関連腫瘍分子の発現度を網羅的に解析し、SYT7発現との相関性を解析したところ、SYT7発現と有意な正の相関関係を有する分子が複数見出された。次年度に向けて、マウス皮下腫瘍モデルおよび、肝転移モデルの条件設定も順調に行っており、これらin vivo実験へと順次進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SYT7の胃癌における機能解析を遂行するために最も重要であったstable SYT7-KO株の作成に成功したことで、研究計画は順調に推移している。研究計画に沿って、in vitro機能解析、in vivo実験を順次行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、計画どおりにSYT7の薬剤感受性への影響評価、in vivo実験、臨床検体での発現解析を進めていく。stable SYT7-KO株と親株における5-FU感受性をWST-1 assayによって調べるとともに、5-FU代謝酵素であるTS、DPD発現の変化をWestern blotting法で調べる。マウス皮下腫瘍モデルにおいて、皮下腫瘍形成能をstable SYT7-KO株と親株で比較する。さらに、マウス肝転移モデルを確立し、肝転移巣形成能をstable SYT7-KO株と親株で比較する。胃癌患者から収集した胃組織検体(癌部および非癌部)を対象に、定量的PCR法によって多検体におけるSYT7 mRNA発現度を調べ、SYT7発現度と、腹膜再発・予後、各種臨床病理学的因子との相関性を調べる
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次年度使用額が生じた理由 |
主に既存の試薬・器具で代用することができたため、細胞培養試薬、実験動物の経費が計画額に達しなかった。これにより、次年度使用額を生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
本格的に行う動物実験費用に、繰り越した経費を使用する計画である。
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