【胃癌腫瘍浸潤Foxp3+T細胞のICOS発現と臨床的意義】胃癌新鮮組織40例から抽出した腫瘍浸潤リンパ球をFACSで解析した。Foxp3+細胞分画は、ICOSを用いてICOS+Foxp3+CD4+細胞(ICOS陽性Treg)とICOS-Foxp3+CD4+細胞(ICOS陰性Treg)の2分画に区別することが可能であった。Foxp3+CD4+細胞中のICOS+細胞頻度(ICOS+/Foxp3+CD4+)は、pStageに正の相関を示し、ICOS+細胞頻度の高値群では、RFSおよびOSともに予後不良となった。【ICOS陽性Tregの機能解析】ICOS陽性Tregは、ICOS陰性Tregに比して抑制性サイトカイン(IL-10)を多く分泌し、効果細胞(CFSEラベル下)の増殖を強く抑制することから、強い免疫抑制機能を有した活性化Tregであることが考えられた。 【ICOS陽性Tregの発現メカニズム】ICOS陽性Tregの誘導メカニズムとして、胃癌に特徴的であるピロリ菌感染、樹状細胞の一種であるpDCに着目した。結果、pDC上のICOSL発現量は、ICOS+細胞頻度と相関関係にあった。またピロリ菌感染の有無の2群間で、前述のICOS+細胞頻度およびpDCのICOSL発現量・TLR9発現量は、有意差を認めた。胃癌手術検体のブロックを用いた多重免疫染色(Foxp3、ICOS、CD303)でも、同様の結果となった。【バイオマーカーとしてのICOS陽性Treg】末梢血の検討では、末梢血中のICOS+細胞頻度と腫瘍組織内のICOS+細胞頻度が相関し、ICOS+細胞頻度に関しては、末梢血が腫瘍組織内免疫環境を反映していることが示唆された。 【他がん種解析】他がんと比較して、胃癌においてはICOSがFoxp3陽性細胞(Treg)に特異的に発現していることは分かった。 以上より、胃癌においてはICOS陽性Tregを標的とした治療として、ピロリ菌やpDCが標的となりうること、また末梢血中のICOS陽性Tregがバイオマーカーとして有用である可能性が考えられた。
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