研究課題
本研究においては、現在臨床試験段階にあるテロメラーゼ特異的腫瘍融解アデノウイルス製剤(OBP-301、テロメライシン)を基本骨格として、マウス癌細胞株に感染性の高いペプチド改変ファイバーを搭載した腫瘍融解アデノウイルス(BP-502)を用いた。細胞株は、CT26(BALB/cマウス由来大腸癌細胞株)とPan02(C57BL/6マウス由来膵癌細胞株)を用いた。当初の研究実施計画に基づき、その進捗状況を概説する。Ⅴ.転移を有するマウス同所性移植腫瘍モデルにおける治療効果とがん微小環境への影響---ルシフェラーゼを遺伝子導入したCT26細胞株(CT26-Luc)を、BALB/cマウスの直腸粘膜下に移植し、またその2日目にCT26-Lucを門脈内投与し、肝転移を有する直腸癌同所性モデルを作成した。マウスを4群(PBS, OBP-502腫瘍内投与, 抗PD-1全身投与, 併用)に分け、1週間に1回ずつを計3回ずつ治療を行い、経時的に直腸癌と肝転移の腫瘍量をIVISにて測定したところ、他群と比較して併用群において有意に腫瘍量が少なく、また生存率も有意に改善した。Ⅵ.ヒトがん細胞株とヒト末梢血単核細胞との共培養条件下における治療効果の検討---実施することができなかった。Ⅶ.テロメライシンと抗PD-1 抗体の併用効果のメカニズム解明---in vitroにおいて、CT26およびPAN02をOBP-502で治療したところ、Western blotおよびFACSにてPD-L1発現が増強していることが確認され、このことが抗PD-1抗体との併用効果のメカニズムの一つと考えられた。研究期間全体を通して、テロメラーゼ特異的腫瘍融解アデノウイルス製剤は宿主の抗腫瘍免疫を活性化し、抗PD-1抗体との併用において有意な抗腫瘍効果を発揮することを証明した。
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