研究課題
これまでにわれわれはDJB (Duodenal-jejunal bypass)が腸内細菌叢microbiotaの変化、GLP-1分泌増加によりDM・NASH改善効果を発揮することを報告した (JGH 2015)。最近では胆汁酸核内受容体Farnesoid Xreceptor (FXR)がスリーブ状胃切除による食思行動変化・耐糖能異常改善・腸内細菌叢の変容に関与していることが報告され (Nature 2014)、さらに高脂肪食で飼育したマウスではmicrobiotaの変化をきたし、腸管上皮で炎症が惹起され腸管バリア機能が破綻することで、炎症性サイトカインが脂肪・肝に達しインスリン抵抗性を引き起こすとの報告がされている(Cell metabolism 2016)。本研究ではDJBの腸管・肝FXR発現に注目し腸内細菌叢microbiotaを変化させ、腸管炎症・肝星細胞に影響を与えることで、耐糖能異常やNASHを改善させると仮説を立て、検討を行った。肥満・糖尿病ラットをDJB群 (D群n=4)、開腹のみSham群 (S群n=4)、GLP-1アナログ製剤Liraglutide投与群 (L群n=4)に分け、術後8週でOGTTを施行。全血・小腸・肝臓・糞便を採取し、腸管・肝臓中FXR、炎症性サイトカイン (real time PCR)・肝NASH grading/staging、microbiotaを比較。D・L群におけるOGTT30、60、120分の血糖はS群と比較し有意に低値であり、insulin抵抗性の改善を認めた (D、L群はn.s.)。またD群AST、ヒアルロン酸は他2群と比較し有意に低値を示し、NASH grading/stagingにおいても軽度であった(DJB: Sham: Liraglutide=Grading 0: 0.75: 2.5/ Staging 0.25: 0.5: 2.5)。D群microbiotaではinsulin抵抗性改善 (Diabetologia 2012)・肝steatosis改善 (Surgery 2016)に関連あるとされているProteobacteriaの増加を認めた。さらにD群の腸管炎症性サイトカインIFNγ (D3.42 vs L79.2 vs S15.1), IL1β (D0.70 vs L1.36 vs S1.45), TNFα (D4.49 vs L7.35 vs S10.1)は他2群より低値を示した。しかし、腸管・肝臓FXRは3群間で差を認めなかった。
2: おおむね順調に進展している
Metabolic surgery、Duodenal-jejunal bypassにおけるFXR、microbiota、腸管炎症性サイトカイン等の変化が検討できており、概ね順調に進展していると思われる。
DJB+胆管バイパスモデル、胆管-回腸バイパスモデル、便移植モデルによる検討を行い、metabolic surgeryのDM・NASH改善メカニズムを解明する。
計画書作成時に購入予定であった消耗品の価格変動のため
次年度への繰越額は消耗品に使用予定である
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