以前、高齢者、糖尿病患者、肝機能低下患者、心停止後などの患者は、移植の対象にならなかった。しかし、慢性的な臓器不足からドナー候補とされるようになっている。これらマージナルドナーからの肝移植は、移植しても機能をしないことも多く、肝機能予後も悪いことが知られている。従って、移植臓器の品質向上に寄与する虚血再灌流障害を軽減する臓器保存液の開発が望まれている。 昨年度、我々の新規に開発した臓器保存系であるSS-IIを用いて、ラット肝移植モデルでの有効性を検証した。しかしながら、従来のUniversity of Wisconsin solution(UW 液)、Histidine Tryptophan Ketoglutarate solution(HTK 液)を凌駕する保存効果は確認出来なかった。 本年度は、浸透圧の調整を含めた肝臓保存効果を高めるために、ヒスチジン、ポリエチレングリコール、マグネシウム塩、グルタミン酸を添加し、SS-Ⅱ液の改良を行い、ラット肝移植モデルでの有効性を検証した。その結果、改良したSS-Ⅱ液24時間保存において、最長3日間の生存が得られた。しかしながら、同条件下のUW液では14日以上の保存効果が得られた。 以上より、肝移植モデルにおけるSS-Ⅱ保存液を用いた6、12、24時間保存における有効性は得られなかった。これは、本来心臓保存を目的として開発されたSS-Ⅱ保存液は、肝臓保存に適しておらず、抜本的な保存液の成分改良が必要と考えられた。
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