研究課題
神経周囲浸潤(Perineural invasion:PNI)を特徴とする膵癌で、PNI の分子メカニズムにユビキチンリガーゼ Fbxw7 と基質 Notch1、ケモカインの関与を明らかにし、それらを標的とした新規治療法を確立することが本研究の目的である。膵癌病理組織検体で予後が明らかな手術切除症例に対して、Fbxw7の免疫染色を行った。膵臓組織の発現を確認したが、Fbxw7発現量と予後の相関は綺麗には認めなかった。 上記より方針の転換を行い、Fbxw7変異を認める胆道癌におけるFbxw7の発現と臨床病理学的な因子の関連、予後の解析を行う方針とした2008年から2013年に切除術を施行された胆管癌症例154例におけるFBXW7の発現を免疫組織化学により評価した。H-scoreにてFBXW7高発現群、 低発現群に分類し、臨床病理学的因子・予後との関連を比較検討。また胆管癌細胞株を用いて、FBXW7を抑制した際の基質タンパク質の発現を検証し、さらに、基質を介した胆管癌細胞の表現型の変化を検討。5年生存率はFBXW7高発現群が89.7%、低発現群が38.6%と有意にFBXW7低発現群で予後不良であった 。また多変量解析にて、無再発生存期間(P=0.006)及び全生存期間(P=0.0004)でFBXW7低発現が独立した予後不良因子となった。胆管癌細胞株でNOTCH1とMCL1が胆管癌におけるFBXW7の基質として同定。FBXW7を抑制でNOTCH1が蓄積し、細胞遊走能と自己複製能が促進された。抑制細胞株にシスプラチンを投与するとMCL1が蓄積し、アポトーシスが抑制された。胆管癌においてFBXW7の発現低下が予後不良因子で、FBXW7の発現を抑制するとNOTCH1やMCL1が蓄積し、胆管癌のmalignant potentialを促進する分子メカニズムを解明した。
すべて 2018
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Cancer Science
巻: 109 ページ: 3883~3895
10.1111/cas.13829