研究課題/領域番号 |
16K19912
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石田 晶玄 東北大学, 大学病院, 助教 (90619660)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 消化器外科 / 胆道外科 / 胆道癌 / クロマチンモデリング複合体 |
研究実績の概要 |
<胆道癌の臨床症例の検討>胆嚢癌の臨床検体47例に対して、クロマチンリモデリング複合体遺伝子のBAP1の免疫染色を行い、臨床経過との比較を行った。免疫染色による発現程度をコンピュータにて解析し、高発現群と低発現群に分類した。生命予後と比較したところ、胆嚢癌では低発現群で有意に予後不良であった。 <胆道癌Xenograftモデルの作成>新たに十二指腸乳頭部癌のXenograftモデルを樹立した。肝内胆管癌、胆嚢癌は症例が少なく、生着率も高くはないため、未作成である。 <クロマチンリモデリング複合体遺伝子発現抑制>胆嚢癌細胞株にsiRNAを導入することでBAP1の発現抑制を行った。細胞機能の変化を解析したところ、増殖能に差は認めなったが、遊走能・浸潤能の増強を認め、BAP1の発現低下が腫瘍の浸潤能を増加させていると思われた。また、抗癌剤感受性の変化をゲムシタビン、シスプラチン、パクリタキセルや、ヒストン脱アセチル酵素阻害薬の5アザシチジンやバルプロ酸で検討したが、感受性に変化は認めなかった。しかしながら、プロテオソーム阻害薬のボルテゾミブに対しては、BAP1発現抑制株で感受性の低下を認めた。ボルテゾミブは胆管癌に対して、治験が行われた薬物であり、遺伝子発現による症例の選択に有用である可能性がある。 <胆嚢癌のBAP1ゲノム変異解析>胆嚢癌におけるBAP1発現と予後が有意に関連しているため、BAP1発現が低下する原因を検討するため、ゲノムの遺伝子変異解析を施行中である。胆嚢癌のBAP1ゲノム解析についての報告はこれまで2報あるが、どちらも症例数は少なく、次世代シークエンスによるものであり、サンガーシークエンスを用いたものはない。また同時にエピゲノム解析も施行する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床症例の解析はほぼ終了した。 クロマチンリモデリング複合体遺伝子のBAP1の胆嚢癌における機能解析もほぼ完了している。肝内胆管癌における先行研究と、胆管癌に対する文献的な報告を含めると、胆道癌における機能変化は解明されつつあると思われる。 Xenograft作成は、生着率と症例数に限界があり、十二指腸乳頭部癌は樹立されているが、胆嚢癌は未作成である。
|
今後の研究の推進方策 |
クロマチンリモデリング複合体遺伝子の一つであるBAP1の発現程度と、臨床予後が有意に関連しているため、BAP1の発現抑制の原因を検索する。 過去には次世代シークエンスで検索された報告もあるが、サンガーシークエンスで検索されたことはなく、またメチル化を調べた報告もない。 サンガーシークエンスとメチル化解析を行う予定である。 また引き続き、Xenograftモデルの作成を行う。
|