研究課題/領域番号 |
16K19914
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高舘 達之 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (50772216)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 膵癌間質 / プロテオミクス / リンパ節転移 |
研究実績の概要 |
膵癌の長期生存を得る唯一の治療法は根治的外科切除だが、多くは切除不能な状態で発見され、さらに根治切除後の再発率も高く、国内有数の膵癌手術症例を有している当科においても、術後5年生存率は20%と非常に予後不良である。膵癌の予後を改善するためには、早期診断のみならず、画期的な治療法の開発が急務である。 膵癌は過剰な間質増生が病理学的な特徴であり、腫瘍細胞のみならず間質の様々な細胞間相互作用が浸潤、転移に関与していることが報告されている。膵癌細胞のみならず、間質におけるタンパク質発現を明らかにし、間質増生を制御することが、膵癌の治療成績向上に寄与する可能性が考えられる。 申請者はこれまで質量分析装置(MS)を基盤としたプロテオミクスの手法により、膵癌の予後関連因子の同定に成功している。その手法を膵癌間質に応用することで、膵癌の新たな転移関連タンパク質を同定し、分子標的治療へと展開することで膵癌の治療成績向上を実現することが目的である。 過去10年間に当科で手術を施行し、組織学的に通常型膵癌と診断された症例の中から、 リンパ節転移のあった5例、リンパ節転移のなかった5例を抽出した。抽出した10例のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織から、レーザーマイクロダイセクションを用いて、膵癌細胞を含まない間質部分のみを採取した。採取した細胞を、プロテオーム解析前処理キット (Liquid TissueTM MS Protein Prep Kit)を用いて、ホルマリンによるクロスリンクの解除と、トリプシンによるペプチド化を行った後に、MSで分析した。MSデータから蛋白質同定ソフトウェアであるMASCOT search engineを用いて、アミノ酸配列データベースSwiss Protから検索し、タンパク質プロファイルを同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵癌手術症例350症例の中から、Discovery stageのリンパ節転移陽性5例とリンパ節転移陰性5例を抽出する段階に予定よりも時間を要した。各症例の臨床病理学的背景を詳細に分析し、さらに病理標本を確認してレーザーマイクロダイセクションが可能かどうかを病理医とともに検鏡し、各5例を抽出した。しかしその後のレーザーマイクロダイセクション、サンプル前処理、MS分析、タンパク質プロファイルの同定は順調に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
リンパ節転移陰性5例とリンパ節転移陽性5例のタンパク質プロファイルを比較し、発現に有意差のあるタンパク質を、転移関連タンパク質の候補とする。その候補タンパク質の特異的抗体を用いて、Discovery stageで用いた10症例以外の多数症例の免疫組織化学を行う。候補タンパク質の発現の有無、局在を確認し、リンパ節転移との相関を検討する。Discovery stageでは有意差があったが、全症例で見ると差がなくなる可能性は容易に想定され、免疫組織化学の結果が本研究の律速段階になると思われる。 免疫組織化学でも有意差が得られれば、培養細胞を用いたタンパク質の機能解析へと進む。
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