研究実績の概要 |
膵癌の間質に発現しているタンパク質を網羅的に解析し、新規転移関連因子を探索することが目的である。 過去10年間に当科で切除した膵癌全355例のうち、術前治療を施行されず、通常型膵癌(PDAC)であった183症例から、リンパ節転移陽性群(LN(+)群)5例、リンパ節転陰性群(LN(-)群)5例を抽出した。FFPE組織からLMDを用いて癌細胞より2mm以内に存在する間質を選択的に採取した。Liquid TissueTM MS Protein Prep Kitを用いて前処理を施行したのち、LC-MS/MS測定を行った。ソフトウェアMaxQuantを用いて解析を行い、LN(-)群で445種類、LN(+)群で396種類、計490種類のタンパク質を同定した。統計ソフトウェアPerseusを用いて、有意に2倍以上差のあるタンパク質を9種類(AGR3, DEF3, MYH14, ABHD14B, HPX, FTL, TPM1, CSRP1, PLEC)特定した。次点候補として閾値境界領域から、スペクトラルカウント法を併用して5種類(S100A8, FLNA, MYH11, COL12A1, TLN1)のタンパク質を追加で選定した。計14種類のタンパク質について、特異的抗体を用いてそれぞれLC-MS/MS測定症例10症例で免疫組織化学を行った。間質の染色性を4段階評価(0:negative 1:weak 2:morderate 3:strong)で評価したところ、3種類(HPX, FTL, FLNA)のタンパク質において間質の染色性に差を認めた。 3種類の候補タンパク質について、Large cohortとして術前治療未施行PDAC 症例168症例で免疫染色を行い、2群間で間質の染色性を比較し、染色結果とリンパ節転移の有無や予後などの臨床病理学的因子との関係を検証している。
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