研究課題
膵癌では、microRNA (miRNA)の発現異常が、癌の発生・進行・転移に寄与することが報告されているが、miRNAを腫瘍選択的に送達する核酸医薬治療はまだ確立されていない。このmiRNAを含有する、細胞から分泌された直径30~100nmの小胞であるエクソソームは、癌での新たな細胞間シグナル伝達メカニズムとして注目されている。膵癌でのエクソソームの存在を評価するために、まず各膵癌細胞株と正常膵上皮細胞株であるHPDE細胞を培養し、抽出した培養液から超遠心分離法にてエクソソームを分離した。エクソソームが分離できているかを、エクソソームの代表的なマーカーであるCD63抗体によるウェスタンブロットを行うと、BxPC-3、CFPAC-1、Panc-1の膵癌細胞株では発現を認めたのに対し、MIA PaCa-2、AsPC-1の膵癌細胞株では発現が減弱していた。正常細胞株においてはCD63抗体によるウェスタンブロットを行ったが、発現を認めなかった。膵癌手術を行った患者の血清でも同様にCD63抗体によるウェスタンブロットにて発現を確認した。電子顕微鏡にてサイズを測定すると、膵癌細胞株であるPanc-1から抽出したエクソソームの平均値は168.5nm、膵癌手術を行った患者の血清からは180.2nmであった。Panc-1、健常者の血清、膵癌患者の血清からそれぞれ抽出したエクソソームからRNAを抽出し、バイオアナライザーにて解析すると、細胞由来のリボソームRNAの発現を認めず、エクソソーム由来のRNAであることを確認した。以上の結果により、膵癌細胞株では、各細胞株によってエクソソームの分泌が異なることが示唆された。また、膵癌患者血清、健常者血清、膵癌細胞株からエクソソーム由来のRNAを同定した。各々のサンプルRNAからのPCRでのmiRNAの同定では、特定のmiRNAは認めなかった。
すべて 2017
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Cytokine
巻: 95 ページ: 12 21
10.1016/j.cyto.2017.02.007