研究課題
肝臓は旺盛な再生能力を持つ臓器であるが、大量の肝切除をおこなって残肝容積が過小になると術後に肝不全を来たす危険が増すことが知られている。そこで術後肝不全を予防するために予定残肝量を増大させる方法として、門脈塞栓術(portal vein embolization:PVE)が1982年に幕内らによって初めて臨床応用された。1990年代に入ると急速にわが国で普及して、肝切除の安全性向上に寄与してきた。その一方で残肝容積の増大を待つ間に病勢が進行して切除できなくなる症例が少なからずあるという問題点があった。そこで近年、ALPPS・ALPTIPSと呼ばれる新たな二期的肝切除法が行われ始めた。前者は一期目の手術で門脈結紮と完全肝離断をおこない、後者は一期目の手術で門脈塞栓と部分肝離断を行い、残肝容積が増大したところで二期的に肝切除を行う。従来の門脈塞栓術と比較して残肝の増大速度・増大率の面で優れているが、ALPPSでは高い死亡率と合併症率が問題となっている。 本研究は、不明な点の多いALPPS/ALPTIPSの肝再生メカニズムを動物モデルの解析を通じて明らかにして、より安全で効果的な二期的肝切除法の開発へとつなげることを目的とする。門脈結紮モデルを対照群としてラットALPPSモデルの解析をおこなった。術後3日目の時点で肝肥大に有意差が認められ、イメージングサイトメトリーによる解析でもALPPSモデルでKi67陽性細胞が有意に増加していた。その一方で術後肝障害の程度に関してはALPPS群と門脈結紮群で有意差は認められなかった。また網羅的遺伝子解析をおこなって、有意に発現が上昇あるいは低下している遺伝子群を同定、パスウェイ解析をおこなった。
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