大腸癌における免疫寛容の機序の解明を目指し、PD-1、PD-L1、CD8、CD68の発現の意義と局在の検討について検討した。大腸癌499例のうちマイクロサテライト不安定性を認める(MSI-H)症例は48例であった。マイクロサテライト不安定性の有無と各因子の発現の関係を検討するため、Propensity score matching法を用いてMSI-H症例36例と、マイクロサテライト安定性をしめす(MSS)症例37例について検討を行った。腫瘍組織、間質のいずれにおいてもPD-L1陽性細胞はMSI-H症例に高頻度に認めた(腫瘍組織;MSSvsMSI-H、5.4%vs36.1%。間質組織;MSSvsMSI-H;27%vs72.2%)。MSI-H症例のうち、腫瘍および間質におけるPD-L1陽性細胞の頻度は低分化型腺癌、脈管侵襲を示す症例が多く(P<0.05)、早期癌症例が多く(P<0.05)、budding gradeも高かった(P<0.05)。MSI-H症例においてPD-L1、CD8陽性細胞、CD68陽性マクロファージは、腫瘍先進部に高発現していた。PD-L1は腫瘍先進部において腫瘍細胞とCD68/CD163陽性細胞(M2-Type関連マクロファージ)に発現していた。以上の結果を第72回日本消化器外科学会総会で発表した。また、Int J Cancer誌にて報告した(Int J Cancer. 2018 Feb 15;142(4):822-832)。その他、3D-modelを用いた病理学的検討にてMSI-H大腸癌においてPD-L1、SD8、D2-40、CD31の発現の局在を検討し、同方法が免疫チェックポイント因子の局在の評価に有用であることをHistopathology誌にて報告した(Histopathology. 2018 Mar;72(4):697-703)。
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