研究課題/領域番号 |
16K19935
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉屋 匠平 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (20717079)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖鎖 / 肝再生 / 急性肝不全 |
研究実績の概要 |
急性肝不全の治療方法として、自己肝再生に期待する保存的治療、生体・脳死肝移植術が行われるが、その選択には明確な基準はなく、実臨床ではしばしば治療法の選択に難渋する。そのため、治療法の判断基準が確立されることは臨床上意義が大きい。近年、肝線維化の血清糖鎖マーカー(WFA-M2BP)の有用性が報告され、肝再生においても血清糖鎖マーカーが有用である可能性が考えられる。そのため、本研究では急性肝不全における予後予測の一助となる新規血清糖鎖マーカーの同定を行う。血清糖鎖マーカーの網羅的探索には、動物実験における一般的な肝再生モデルであるマウス70%肝切除モデルを用いて行った。マウス肝再生モデルを用いての血清糖鎖動態の解析は、共同研究施設である産業技術総合研究所・生命工学領域・創薬基盤研究部門糖鎖技術研究グループにて検索した。 (1)肝再生モデルの血清糖鎖動態の検索、マーカー検索のために、①開腹時、②肝切除術後12時間後、③開腹のみ12時間の3時点の血清検体を用いた。レクチンアレイ法による網羅的検索により、肝切除術後12時間後のみ発現の上昇が認められる糖鎖を5つ検出した、(2)肝再生過程において上昇を認める糖鎖と結合する糖タンパクの検索を行い、肝再生12時間後に発現が3倍まで上昇するある一つの糖鎖結合糖タンパクの同定に成功、現時点での血清糖鎖マーカーの候補と考えられた。今後は同定した糖鎖マーカーのヒト肝再生過程における同定の検索、肝再生との相関(生体肝移植ドナーの血清および術後CTーVolumetry解析)の検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の基礎的研究により以下の結果が得られた。 (1)マウス肝生成過程において、血清中の発現量が上昇する糖鎖が5つ存在した。 (2)上記の糖鎖それぞれにおける糖蛋白の検索を行い、肝切除12時間後に3倍程度の発現上昇を認める糖タンパクを同定した(糖鎖A-糖タンパクX)。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標は急性肝不全における予後予測の一助となる血清糖鎖マーカーの同定である。そのためにヒトの肝再生糖鎖マーカーを同定し、急性肝不全時の予後との相関まで行うことを目標とする。 ヒト肝再生血清糖鎖マーカーの選別として、(1)現在同定されている(糖鎖A-糖タンパクX)のヒトの肝再生過程における動態の解析:生体肝移植ドナー血清検体(開腹時、閉腹時、術後1日目~術後7日目)を用いて上記候補マーカーの動態を同定する。(2)ヒト肝切除術後肝生成の評価:肝再生の評価は術後および術後CTの3D-Volumetryにて行う。肝再生率は術前全肝容積に対する術後肝容積の割合として算出する。(3)ヒト肝再生血清糖鎖マーカーの同定:(1)で同定した血清糖鎖マーカーが(2)で算出される肝再生率と相関する、もしくは肝再生率を予測し得ることを明らかにする。 ヒト肝再生血清糖鎖マーカーの有用性の検討として、急性肝不全症例の経時的血清を用いて、治療経過・予後と糖鎖マーカーの相関を解析する。予後予測に有用な初診時および治療経過中の最適なcut off値を算出する。既存の予後予測因子と比較し、その有用性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
事務処理時の誤りにより、消耗品費にわずかな金額の繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
特に変更なし。
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