研究課題
T細胞の機能を抑制するPD-L1受容体に対する抗体治療が悪性黒色腫に劇的な腫瘍抑制効果をもたらし、他の癌種に対する有効性もその後確認され、臨床的にその適応が急速に拡大してきており、腫瘍免疫に対する注目度が近年非常に高まっている。我々は、肝外胆管癌において、腫瘍間質に存在する免疫細胞に着目してその役割を明らかにすべく今研究を行った。当科にて根治目的切除を施行した肝外胆管癌症例114例を対象として、パラフィンブロックを用いて免疫組織学的に腫瘍関連好中球(CD66b+細胞)、マクロファージ(CD163+細胞)、制御性T細胞(FOXP3+細胞)、CD8 T細胞の存在を確認し、臨床病理学的な因子や腫瘍進展との関連性を検証した。その結果、それぞれの細胞の存在はお互いが強く関連しており、個々の細胞の存在は切除後の生存予後と関連性を認めた。そこで、これらの免疫細胞の存在を統合して算出するrisk signatureを作成し、これを用いることで肝外胆管癌の切除後の再発や、生存予後をより正確に予測できることを確認した。Risk signatureは切除後の遠隔転移再発にも関連し、再発病変に対するジェムシタビンの治療抵抗性とも関連を認めた。今後より多くの症例での検証作業は必要ではあるものの、抗がん剤の効果予測にも用いることができる可能性がある。今後、実験も含めてこれらの免疫細胞間の相互作用や腫瘍と免疫細胞の関連性におけるメカニズムについてより詳細な検討を行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
上記内容をPublishし、現在肝細胞癌で同様の研究をすすめている。腫瘍組織からTANの分離に挑戦中である。
TANは抗腫瘍免疫を負に制御することが報告され、このメカニズムにどのような因子が働いているのかを今後明らかにする。TANやCD8 T細胞、Tregの分離を腫瘍細胞から行い、それらの細胞の発現解析を行う。
試薬、消耗品等については、医局保管のものを使用することが出来た。研究費は主に試薬などの消耗品購入費に充てるほか、情報収集や研究成果発表にかかる学会出張旅費に充てたいと考える。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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