研究実績の概要 |
この研究では、ヒト肝細胞癌における好中球を中心とした免疫細胞群が腫瘍の進展にどのように関わるかを免疫組織学的に解析し、その臨床的な特性を明らかにすることを目的とした。 2004年1月~2013年4月に初回・根治切除術を施行された肝細胞癌386症例のうち129症例について腫瘍関連好中球(TAN)のマーカーであるCD66bを用いた免疫染色を行った。腫瘍内部に浸潤するTANの平均個数の中央値は4 cells/HPF 腫瘍周囲組織に浸潤するTANの平均個数の中央値は30 cells/HPFであった。予後との関連性については、腫瘍内部においてTANは全生存期間(OS)・無再発生存期間(DFS)との関連性は認めなかった。一方、腫瘍周囲組織に浸潤するTANが少ない症例群では、浸潤が多い症例群と比較して全生存期間が有意に延長していた(P=0.0296)。以上の結果から、腫瘍内よりも腫瘍外のTANが腫瘍の進展と密接に関連している可能性がある。腫瘍外TANがどのように腫瘍進展に関わるかについてのメカニズムを調べるために、他のメジャーな免疫担当細胞との関連性を調べる。具体的には総リンパ球(CD3), Killer-T細胞(CD8),B細胞(CD20), 腫瘍関連(M2)マクロファージ(CD163), 制御性T細胞(FoxP3)について免疫染色を行い、TANとの関連性および臨床病理学的因子や予後因子との関連を評価する。また、腫瘍外組織からの好中球分離を行い、TANの機能解析を行う。
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