研究課題
癌の進展において、癌細胞のみでなく癌間質が極めて重要な役割を果たすことが近年の研究や我々の成果から明らかになりつつある。本研究では大腸癌間質における癌関連線維芽細胞(CAF)が発現する新規癌関連分子であるVCANに着目する。第1の目的は浸潤・転移の促進におけるVCANの機能的意義、さらにTGF-βシグナル経路を軸とした癌細胞、CAFの相互作用、微小環境でのマイクロRNAによる制御機構を解明するものである。第2の目的は、多層的かつ網羅的な大規模ゲノム、トランスクリプトームデータを集積することで、大腸癌の発癌・進展における癌間質の役割とVCANの臨床的意義に迫り、微小環境バイオマーカーとしての価値を追求し個別化医療への道を開くことである。第2の目的については比較的順調に結果を得られたと考えている。当研究課題申請時の予備実験データを大幅に拡大し、マイクロアレイとそれを免疫染色に応用することで、VCAN遺伝子mRNA発現および癌間質におけるVCANタンパクが手術後のステージ2-3症例の再発に強く関連することを報告するに至った。これらは5つの独立した大腸癌コホート、計900例を超えるステージ2-3症例を使用することで、極めて高い再現性を持って検証することができた。本研究によりVCAN遺伝子発現が術後再発の高リスク症例を抽出するバイオマーカーとして臨床応用が期待されることと同時に、大腸がんにおける対微小環境戦略の重要性が示唆されていると考えている。
3: やや遅れている
臨床的な解析は順調に進んだ一方で、in vitroの実験系の確立に難渋している状況であるため。
in vitroにおけるVCANおよびTGF-β関連の解析準備を進めるとともに、臨床サンプルの症例数を増やし他の炎症関連の因子との組み合わせなどによりさらにバイオマーカーとしての有用性を追求する。
臨床サンプルを用いた解析、PC上の解析が主体となったため、当初予定していた細胞実験関連の支出が予定より少なかったため。
臨床データの拡充と免疫染色の追加、細胞実験に関連した物品費に使用する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Carcinogenesis
巻: 37 ページ: 878-887
10.1093/carcin/bgw069