研究課題
大腸癌を含む固形癌の進展において、癌という組織を構成するのは癌細胞と癌間質であり、後者が癌の進展に極めて重要な役割を果たすことが近年の大規模なトランスクリプトーム研究などにより明らかにされつつある。本研究では大腸癌間質における癌関連線維芽細胞(Cancer-associated fibroblasts:CAFs)が発現する新規の癌関連間質タンパクであるVCANに着目する。第一の目的は浸潤・転移の促進におけるVCANの機能的意義、さらにTGF-βシグナル経路を軸とした癌細胞、CAFsの相互作用を解明するものである。第二の目的は、多層的かつ網羅的な大規模ゲノム、トランスクリプトームデータを集積することで、大腸癌の発癌・進展における癌間質の役割とVCAN の臨床的意義に迫り、微小環境バイオマーカーとしての価値を追求し個別化医療への道を開くことである。第一の目的については、癌間質・微小環境をin vitroで再現することは決して容易ではなく難渋する状況であるのに対し、第二の目的についてはすでに成果が得られつつある。マイクロアレイおよび免疫染色によりVCAN遺伝子発現、CAFsによる間質VCANタンパク発現がステージ2-3大腸癌の再発に関連するバイオマーカーとなり得ることをすでに報告することができた。さらに大腸癌のゲノム異常、特にミスマッチ修復欠損やマイクロサテライト不安定性、BRAF遺伝子変異などとの関連を複数のコホートで解析しており、癌組織をゲノム、間質、TGF-βシグナル経路など複数の側面から俯瞰することで新規のサブタイプの存在が同定されつつある。
2: おおむね順調に進展している
癌間質研究をin vitroと臨床データを相互補完的に行うことが本来の予定であった。しかしin vitroに実験系確立に難渋する状況が続き、一方で臨床データの解析では予想以上の結果と今後の発展への手ごたえが得られている。従って後者に注力することで研究の成果につなげられる可能性が高いと考えており、総合的には順調と言える状況である。
大腸癌のゲノム異常、特にミスマッチ修復欠損やマイクロサテライト不安定性、BRAF遺伝子変異などとの関連を複数のマイクロアレイ、RNAシークエンス、FFPEコホートで解析する。臨床データを裏付けるため、ポイントを絞ったin vitro研究を行う。
PC上でのデータ解析を主体に行ったこと、学会等での旅費を使用しなかったことにより次年度使用額が生じた。次年度使用額は主に免疫染色、抗体、細胞関連実験の物品費に充当する。
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Oncology Letters
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