研究課題
担癌患者(胃癌、大腸癌、膵癌)及び健常対照者の末梢血液を遠心方で分離して得られた赤血球を利用して実験を行った(血小板、白血球については未だ実験検討中)。赤血球をRPMI1640にexosomeを除去したFBS(Exo-FBS, SBI社)を添加した培養液と混和して24時間incubationを行ったのちに得られた培養上清を回収し、超遠心法にて上清中に含まれる血球由来exosome(EDM:erythrocyte-derived microvesicles)を抽出した。このEDMをPKH67でラベリングし、蛍光免疫染色法にて、腹膜中皮細胞(MeT-5A)に取り込まれている様子を確認した。また、wound healing assayにおいて、胃癌細胞(MKN74)及び大腸癌細胞(colon26)は、担癌患者由来EDMを添加すると健常対照者由来EDMやnon treatment群と比較して有意に創傷治癒能が亢進した。また、同様の系で浸潤・遊走アッセイを行ったところ胃癌患者由来EDMは胃癌細胞株の遊走能を更新させたが、浸潤能は差を認めなかった。胃癌患者由来のEDMを胃癌細胞に取り込ませ、中皮細胞の接着アッセイを行うと、胃癌患者由来EDMは両細胞株の接着能を亢進させた。大腸癌患者由来EDMにおいては有意差を認めなかったものの接着能が亢進する傾向を認めた。各種細胞機能アッセイの結果より、EDMは癌細胞に取り込まれることで、悪性形質を変化させている可能性があると考えている。以上の結果より、EDMを取り込むことで変化する細胞内分子の同定を現在試みている。
3: やや遅れている
癌細胞由来のexosomeを使用した実験系はこれまで当研究班で確立されたプロトコールがあるが、癌患者の血液由来のexosomeについては大量にストックができず、アッセイの度に新たに抽出から行う必要があるため、実験に至るまでに時間を要する。
EDM並びにEDMを取り込んだ各種細胞株よりRNAを抽出し、PCR arrayを用いて変化する分子の同定を試みる予定である。また、exosome内には豊富にmicroRNAが含有されていることから、EDM内のmicroRNAに着目し、同様にmicroarrayを用いて癌悪性度関連microRNAの同定を試みる。同定した分子を候補に、担癌患者の術前・術後・化学療法中に採取した血液より抽出したEDMを用いて、癌進展並びに治療感受性のバイオマーカーとしての可能性についても検討を行う予定である。また、現在ストックしている血小板、白血球についてもmicrovesicleを分泌することが確認できれば、EDMと同様に検討を加えていく予定である。
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