食道扁平上皮癌の腫瘍増殖・転移メカニズムを明らかにし、食道扁平上皮癌に対する新規の抗腫瘍薬を開発することを最終目標として研究を行った。具体的にはケモカインのう、炎症性肺疾患などの他分野でも研究対象とされているIL-8およびそのレセプターCXCR2に着目し、IL-8およびCXCR2を高発現してる食道扁平上皮癌細胞株TE4を用いてIL-8/CXCR2の癌細胞動態への関与について実験を進め、食道扁平上皮癌の腫瘍増殖・転移メカニズムの解明ならびにIL-8/CXCR2をターゲットとした抗腫瘍薬の開発すべく基礎研究を行った。具体的な内容は下記の通りある。 1)食道癌転移モデルを用いたCXCR2阻害薬を用いた腫瘍増殖抑制、転移抑制の検討 平成27年度で得られた結果の再現実験を行い、さらに動物モデルを用いてCXCR2阻害薬のSB225002投与により食道扁平上皮癌の腫瘍増殖が抑制されることを明らかとした。 2)ケモカインとケモカインレセプターとのautocrineあるいはparacrineによってどのようなシグナル伝達系が亢進するのか、網羅的遺伝子解析法を用いてその機序を検討したが、機序の解明には至らなかった。 3)食道癌細胞のEGFレセプターなどを介して、ケモカインレセプター阻害薬が癌細胞選択的に取り込まれるような新しいターゲティング療法を開発し、動物モデルでその効果を検討することを計画したが、基礎実験の段階にとどまった。
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