• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

腹腔内癒着における凝固線溶系からみた病態解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K19956
研究機関順天堂大学

研究代表者

宗像 慎也  順天堂大学, 医学部, 助教 (50758761)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード腸閉塞 / 癒着 / イレウス / 凝固線溶系 / PAI-1 / プラスミン
研究実績の概要

術後腸閉塞の原因となる癒着には凝固が促進し、Tissue-plasminogen activator(tPA)を介したPlasminによる線溶系をPlasminogen activator inhibitor(PAI)-1が抑制することで線維化が完成することでなされる。今回新たに作成した腸管癒着のモデルマウスにおいて、PAI-1を遺伝子的または薬物的に阻害することで線溶系を亢進させ、癒着を早期に予防できる可能性について検討した。癒着作成により早期にPAI-1の上昇を認め、plasminの活性が低下していた。そこでPAI-1欠損マウスおよびPAI-1阻害薬では癒着/病理組織の改善を認めた。この作用にはtPAが必要でPAI1阻害薬はtPA依存性であることが解明された。また癒着マウスにおいて腹腔内の大半をしめる腹腔内遊離マクロファージ(MΦ)が癒着組織および腹水中に動員されていた。この現象もPAI1はtPA依存性にMΦを遊走させていることがわかった。またMΦをクロドロン酸で欠損させることにより癒着は改善したことからMΦは癒着形成に重要な働きをしていることがわかった。さらにMΦはEpidemal growthfactor(EGF)を産生しており、腹膜中皮細胞に働きかけ、EGFRシグナルを経由することで癒着形成に関与していることが判明した。またこの中皮細胞がPAI-1を産生することでさらなる強固な癒着が形成させることが示唆された。これによってtPA PAI1は癒着形成に重要な因子であり、MΦの遊走とMΦのEGFの分泌によりさらに中皮細胞にPAI1の供給を促しており、線溶系を抑制することで強固な癒着形成がもたらされることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

以上をふまえ、すでにFASEB.Jに投稿、掲載された( Honjo K, Munakata S, FASEB.J. 2017)。申請段階である程度の研究の主軸ができており、より加速して解析を順調に行うことで早期に研究発表をすることができた。凝固線溶系の実験は熟知していることもあり、簡潔に実験でき結論をまとめることができたのが要因である。

今後の研究の推進方策

今後は、これまでやってきた線溶系と炎症の研究をさらに進展させるためにさまざまな課題に取り組んでいく。炎症性腸疾患(Munakata S, Gastroenterology, 2015)やaftVersus Host Disease (Sato A, et al. Leukemia, 2014)、さらに血球貪食症候群(Shimazu H,Blood, 2017)のモデルマウスを用い、線溶系因子と難治性疾患の関連性を解明してきたことからさらに踏み込んで解析していく予定である。炎症のみならずこれまでに線溶系を亢進させ組織再生を促す研究もしており(Tashiro Y, Blood, 2012)、本癒着の研究も線維化を防止し、組織再生を促した研究の一端であった。具体的にはすでに線溶系が炎症性細胞の動員を制御していることから、その炎症細胞がどういったシグナルでどういう因子を分泌しているかなどをつめていく予定である。まだまだ難治性疾患が多い中で凝固線溶系の生体内に果たす役割は大きいと考えており、凝固線溶系を制御することで重症疾患、難治性疾患を軽快することが可能であると考えている。これらの研究が後世への新たな治療戦略となっていくことを期待し、研究に邁進していく次第である。

次年度使用額が生じた理由

論文作成、投稿に時間を使ったことと残存試薬を使い、費用を節約できたことが要因である。

次年度使用額の使用計画

確認実験をしつつ、その他の凝固線溶系に関連する疾患の解明に努力していきたい。そのために抗体をはじめとする試薬に使用していく予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Plasminogen activator inhibitor-1 regulates macrophage-dependent postoperative adhesion by enhancing EGF-HER1 signaling in mice.2017

    • 著者名/発表者名
      Honjo K, Munakata S, Tashiro Y, Salama Y, Shimazu H, et al.
    • 雑誌名

      The FASEB Journal

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1096/fj.201600871RR

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Pharmacological targeting of plasmin prevents lethality in a murine model of macrophage activation syndrome.2016

    • 著者名/発表者名
      Shimazu H, Munakata S, Tashiro Y, Salama Y, Dhahri D, Eiamboonsert S, Ota Y, Onoda H, Tsuda Y, Okada Y, Nakauchi H, Heissig B, Hattori K.
    • 雑誌名

      Blood

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1182/blood-2016-09-738096

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Fibrinolytic crosstalk with endothelial cells expands murine mesenchymal stromal cells.2016

    • 著者名/発表者名
      Dhahri D, Sato-Kusubata K, Ohki-Koizumi M, Nishida C, Tashiro Y, Munakata S, Shimazu H, Salama Y, Eiamboonsert S, Nakauchi H, Hattori K, Heissig B
    • 雑誌名

      Blood

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1182/blood-2015-10-673103

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 当院で経験した大腸癌術後腸閉塞の検討2016

    • 著者名/発表者名
      本庄薫平, 河野眞吾, 牧野有里香, 茂木俊介, 塚本亮一, 伊藤慎吾, 盧尚志, 市川亮介, 呉一眞, 宗像慎也, 丹羽浩一郎, 石山隼, 杉本起一, 神山博彦, 高橋玄, 小島豊, 五藤倫敏, 奥澤淳司, 冨木裕一, 坂本一博
    • 学会等名
      第71回日本大腸肛門病学会学術集会
    • 発表場所
      伊勢
    • 年月日
      2016-11-19 – 2016-11-19
  • [学会発表] The risk factor of early postoperative small bowel obstruction (ESBO) after laparoscopic assisted colectomy (LAC)2016

    • 著者名/発表者名
      Kumpei Honjo, Kazuhiro Sakamoto, Michitoshi Goto, Koichiro Niwa, Shinya Munakata, Rina Takahashi, Yu Okazawa, Hisashi Ro, Shingo Kawano, Yurika Makino
    • 学会等名
      第71回日本消化器外科学会総会
    • 発表場所
      徳島
    • 年月日
      2016-07-16 – 2016-07-16
  • [学会発表] 炎症性腸疾患におけるプロテアーゼの機能解明2016

    • 著者名/発表者名
      宗像慎也,植山孝恵,牧野有里香,本庄薫平,青木 順,高橋里奈,丹羽浩一郎,石山 隼,杉本起一,神山博彦,高橋 玄,柳沼行宏,小見山博光,小島 豊,五藤倫敏,冨木裕一,坂本一博,服部浩一,Beate Heissig
    • 学会等名
      第116回日本外科学会定期学術集会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      2016-04-14 – 2016-04-14

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi